彼はいつも1人部屋に引きこもって、私には想像もできない、多くの事に考えを巡らせている。
誰にも本心を明かさず、ただひたすらその天才とも言うべき采配を皆のために奮う。
彼は常日頃から皆に称賛される。あまりに人間離れした頭脳で多くの問題を解決する。
彼は誰のどんな言葉も静かに微笑んで受け止める。だから皆から慕われる。
彼は幼い頃、体が弱く内気で、周りの子達からよく虐められていた。私はその子らをいつも撃退していた。彼はとても情けなかった。言い返すことも仕返しもせず女の私に守られてばかりなんて、本当に情けない。
彼は今、皆に裏切られて1人になった。
彼はまたあの頃のように黙っていた。どんな顔をしてそこにいるのか、わからなかった。
駆け寄って肩を掴んだ。どうして怒ったり、泣いたりしないの?また黙っているの?立っているのもやっとなくらいあなたの心がもうボロボロなの、わかっているのに。私に言えばいいのに。私がどんな相手だって追っ払うのに。
「ねえ、もう泣かないで」
彼が静かに微笑んで、私を抱きしめた。
「僕の分まで泣かないでください」
少し揶揄うように、優しく囁かれた言葉に、息が詰まった。
私に守らせて。私がついてるのに。私が、何だって受け止めるのに。
息ができない程、情けなく溢れ出したものに、自分でも呆れてしまった。
この人がいないと強くなれないのはずっと私の方だった。
11/30/2023, 1:56:06 PM