広島に向かう夜行バスの中、通路側の席だった私の隣には若い女の子が座っていた。その子ったらワンピースなのに、白い脚を太ももまで出し、片方の脚は折り曲げて座席にのせる格好で、そのふくらはぎを指でえいやえいやとマッサージしていた。カーテンの隙間からチラリと見えるその様子を眺め、私は興奮している自分に気付き、なんともいたたまれない気持ちになっていた。バスを予約する際、「異性は隣どうしにならないよう考慮します」とは記載していたものの、同性愛者のことまでは配慮が難しいんだろうな。そもそも異性の席を離すのは、隣が異性だと警戒する人達を安心させるのが目的で、勝手に興奮する人はどうにもできないのかもな。と、ふとそんなことを考え、日本のLGBT理解が進むといいなという考えに思いが馳せていた。そんな私に気づくはずもなく彼女は反対の脚に変えてマッサージを継続していた。
私の通路を挟んだお隣のおばさんは、さっきからビニールをガサガサしている。さっきのパーキングで購入した何かをどうにかしているのだろう。そして煙草臭いから煙草も吸ってきたな。私は適当に着けていたマスクを鼻までしっかり上げ、寝る体制に入る。後1時間ほどで目的地だが全然眠れていない。まあ夜行バスとはこんなものだろうとは思いながらも、今日は待ちに待ったアーティストのライブなんだから万全の体制で挑みたい。しかし、どうして夜行バスにしてしまったのかと少し後悔していた。
周りが明るく、ざわつき始めたところで眠りから覚めた。よかった1時間は眠れたようだ。車内アナウンスがまもなくの到着を告げる。すっかり愛着が湧いた若い女の子とも、煙草のおばさんともここでお別れだ。短い間だったけど私の物語の登場人物として居てくれてありがとうございました。
#好きな本
好き、だって。
ありがとう、嬉しい。
断言できるってすごいこと
意味を咀嚼し、確認せずとも
その言葉が湧いて出てくる時
自分の中だけでの気持ちの動きだったのが
しっかりした形になって人に伝わる
そんな風に自然に言葉を使えられる
その時が来るまでは
ただ、感じさせてほしい
いろんな経験が、「断言できる」
という状態を作ってくれる気がするんだ
言わないことが照れ隠しとか
好きって言い返せないことが
その逆を意味するとかじゃなくて
あの空に浮いてる欠片をまだ
全部は掴みきれてないんだよ
だから今日も私は空を見上げている
あいまいな空
こんなに生きたのに
他人の気持ちって分からない
知らない物語はたくさんあるんだね
思い出してイライラするあの恋も
本当は私の間違いだったのかも
嫌だな、空しくなるな
久しぶりにあなたのインスタを覗いてしまった
でもね、悔しくないよ
優しい気持ちで見られたよ
#「ごめんね」
背が低い彼も
ちょっとぽっちゃりな彼も
いつも髪の毛ボサボサの彼も
腕、もりってなってるの見るだけで
ちょっとよく見える
それは多分あいつのせいだ
皮下脂肪が無くて
うっすら柔らかい毛が生えてて
日焼けしてなくて白くて綺麗で
でもたくましい
そんなあいつの腕が好きだった
半袖の季節
それでも見えるか見えないかのラインで
もったいぶってる感じもいい。
#半袖
受け取っては手放して
後悔しての繰り返し
どうして?ってその時の私は
なんにも見てなかったから
でも明日は違うと思うんだ
今日は「好き」が何かを考えた
その答えは時間と共に変化するだろう
今のところでいいから
その定義を残そうとして
何も見てない目をやっと空に向けて
ちっぽけな自分のために
照らしてくれる月を見た
優しかった
ありがとう、私はまだまだ
学ぶことがたくさんある
#月に願いを