Rina

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 広島に向かう夜行バスの中、通路側の席だった私の隣には若い女の子が座っていた。その子ったらワンピースなのに、白い脚を太ももまで出し、片方の脚は折り曲げて座席にのせる格好で、そのふくらはぎを指でえいやえいやとマッサージしていた。カーテンの隙間からチラリと見えるその様子を眺め、私は興奮している自分に気付き、なんともいたたまれない気持ちになっていた。バスを予約する際、「異性は隣どうしにならないよう考慮します」とは記載していたものの、同性愛者のことまでは配慮が難しいんだろうな。そもそも異性の席を離すのは、隣が異性だと警戒する人達を安心させるのが目的で、勝手に興奮する人はどうにもできないのかもな。と、ふとそんなことを考え、日本のLGBT理解が進むといいなという考えに思いが馳せていた。そんな私に気づくはずもなく彼女は反対の脚に変えてマッサージを継続していた。
 私の通路を挟んだお隣のおばさんは、さっきからビニールをガサガサしている。さっきのパーキングで購入した何かをどうにかしているのだろう。そして煙草臭いから煙草も吸ってきたな。私は適当に着けていたマスクを鼻までしっかり上げ、寝る体制に入る。後1時間ほどで目的地だが全然眠れていない。まあ夜行バスとはこんなものだろうとは思いながらも、今日は待ちに待ったアーティストのライブなんだから万全の体制で挑みたい。しかし、どうして夜行バスにしてしまったのかと少し後悔していた。
 周りが明るく、ざわつき始めたところで眠りから覚めた。よかった1時間は眠れたようだ。車内アナウンスがまもなくの到着を告げる。すっかり愛着が湧いた若い女の子とも、煙草のおばさんともここでお別れだ。短い間だったけど私の物語の登場人物として居てくれてありがとうございました。


#好きな本

6/15/2023, 11:26:16 PM