コルン

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9/16/2024, 3:07:39 PM

「空が泣く」


「泣き出しそうな空」とはよく言ったもので、灰色の面積が圧倒的に多い空は、あからさまに落ち込んでいるように見える。教室の窓からぼんやりと上を見上げている私は、BGMと化している化学の先生の話の内容より、そんなにも空が泣きそうな理由の方が気になる。何か嫌なことでもあったのだろうか。私が力になれたら良いのだが。「雨の後には虹が出る。だから今は我慢して歩こう」なんて、誰が言った名言なのだろう。私は今日傘を持ってきていないので、たとえ雨が止んだ後虹が出ようが、雨が降ってもらっては困る。なので早いところ空の悩みを聞いてあげて、泣き出す前に笑顔にさせてあげなければ。そんなことを思いながらふと時計を見ると、長針が3を指している。もうすぐ授業が終わる。と、不意にBGMが音量を上げた。

「そういうことで明日はテストをするから、各々勉強しておくように」

流石に聞き流すわけにはいかない情報が聞こえたところで、聞き慣れたチャイムの音が鳴る。勢いよく教室から飛び出していくクラスメイトたちを横目に外を見ると、大粒の涙がこぼれ出していた。あぁ、なんだ。君もテストが嫌だったのか。

「泣きたいのはこっちだよ」

9/15/2024, 2:58:43 PM

「君からのLINE」


スマホが一瞬、震える。まるで喜びに打ち震えるようなその振動に、私の心も震わされた。君以外のLINEの通知は切ってあるため、その束の間の振動は君からのメッセージを受信したことを表すことが多い。期待に心を躍らせながらスカートのポケットからスマホを取り出し、画面を確認すると、

「もうすぐ雨が降りそうです」

ご丁寧にお天気アプリがしばらくの降雨を教えてくれたようだ。理不尽な恨みをお天気アプリに抱きつつため息をつく。そのままスマホのロックを解除し、最も開きやすい場所に設置されたラインのアプリを開く。ほんの少しスクロールしないと出てこない君のアイコン。その現状にまたため息をひとつ。少し前に交わしたやりとりは、君からの一言で始まり、私からのスタンプで終わっている。「この後雨が降るらしいよ」打ち込んだメッセージを紙飛行機に乗せて飛ばせないまま、初めから無かったことのように削除する。どうでもいいことをどうでもいい気持ちで君に送る勇気は、私にはまだない。

「いくじなし」

9/6/2024, 12:57:17 PM

「時を告げる」


けたたましい人工的な音で目を覚ます。手探りでスマホを探し画面を見ると、腹が立つくらい整ったフォントの0730の数字。まずい遅刻だ。重い身体を勢いよく起こし、掛けている制服を引っ掴む。覚醒しきってない頭で必死に今日の時間割を思い出しながら、マグにコーヒーを淹れる。少しこぼした。冷ますついでに髪の毛を縛り、目についた教科書たちを鞄に押し入れる。まだ少し熱いコーヒーをあおり、マグをシンクに入れたら準備完了。これを朝ご飯とする。思い出したように再び喚き始めたスマホを黙らせ、スカートのポケットに押し込む。このアラームが鳴ったらいよいよまずい。長距離ダッシュの準備運動としてまだ夢の中にいる家族に大きな声で呼びかけ、外の世界への扉を開ける。あぁ、今日が始まる。

「いってきます!!」