『小さな愛』
大円の中の一輪。
その中央。
それは例えば
薔薇
チューリップ
百合
向日葵
色、かたち、大きさ異なる
花の中で咲き誇る、
貴方を象徴する花。
それは中心であり、
主人公であり、
大きな愛であり、
花束の華である。
小さな愛。
華奢でいい。
色とりどりの中で一輪
美しく咲く
可憐な華。
その花はまるで、
貴方だと言わんばかりに。
『空はこんなにも』
教えてください。
その悲劇の真相を。
教えてください。
貴方がどうなってしまったのかを。
襟から白檀。
袖から伽羅。
ほんのりとした香に、
漆黒の正装。
右手には紙袋を。
左手にはハンドバッグを。
涙が垂れたのか、
目元や頬の化粧は崩れ。
涙一つない空。
もう うつし世にはいない貴方に
涙を流して。
今日の空はこんなにも、澄んでいて
まるで嫌味を吐いているくらいに。
私も貴方と、
その空へ昇れればよかったのに。
『子供の頃の夢』
儚く。
一瞬にして。
望んだ事実すら
忘れてしまうくらいに。
「ケーキ屋さんになりたい」
「歌手になりたい」
「消防士になりたい」
「宇宙飛行になりたい」
そう何度か唱える。
10年、また10年。
そんな夢は記憶の隅に、
残業を繰り返す。
儚く。
届かないような夢。
その感性の豊かさは
今ではもう
どこかに置いてきてしまったようで。
子供の頃の夢。
ずっと持ち続けていられたら
今 という 未来 は
変わっていたのかも
しれない。
『どこにも行かないで』
君の背中を追って、
追い続けて、
手を伸ばして、
走り続けて。
それでも追いつけないから。
君が教えてくれた問題も
君が笑った成績も
全て僕には分からない。
1位になれない僕。
ずっと阻む君。
その君の壁の前で
2位の僕が止まって
主席の君は進む。
進み続ける。
ねぇ、どこにも行かないで。
どこまでも行かれたら
もう絶対に追いつけないから
『君の背中を追って』
毎回、
その1枚の紙を見る度に、
絶望する。
また、今回も2番目。
1位の影に隠れてしまう2位。
どれだけ長い時間机に向かっても。
どれだけ効率と質を求めても。
彼には届かない。
ずっと僕の前を走って、
抜かそうとする僕の行く手を阻み
壁となる。
君はどんどん上に行く。
僕とは違う。
その1点を逃さないから。
君の背中を追って。
追い続けて。
オール5の1位の君を
2位にできる日は来るのだろうか。