「それでね、 女子高生がきゃっきゃと楽しそうに話しながら通ってさ?」
「うん」
「私もあんな若い頃があったな〜とか、 思ったわけよ?」
「今も十分若いけどね?」
「そりゃあ今だってまだ20代ですし? 若いんだけどさ、 やっぱ高校生の若さには敵わないじゃない?
あの頃って戻りたくても戻れない、 一生に一度の出来事だと思うの。 どうせならもう一度戻ってみたいわよ」
「高校生の頃も可愛かったよね。 もちろん、 今も可愛いけど」
「君はどうせ『あの頃も可愛かった〜』とても言うんでしょうけどね」
「さすが。 バレバレだったか」
画面の向こうの君をそっと撫でる。
君に比べて、 随分歳をとってしまった。 その分色々な経験もしたよ。
残される僕のことがどれほど心配だったかは、 このテープの山でわかる。
僕を思ってくれてありがとう。 そちらに行ったら、 たくさんの土産話と、 君への愛を語るよ。
そのために僕は、 今日も生きているんだ。
愛しているよ。
「今日ちらし?」
「文句なら受け付けないからね〜」
「いや、 別に文句ないよ? ひな祭りだしそうかなって聞いただけじゃん」
「知ってる。 からかっただけ〜!」
毎年ひな祭りは豪華な食卓になる。
ちらし寿司に、 はまぐりのお吸い物、 といった定番はもちろん、 今年は美味しそうなお刺身もずらりと並んで…… ラストはいちごの乗ったホールケーキ。
「いっつも言うけどさ、 ホールじゃなくてもよくない?」
「食べるしいいでしょ! それにひな祭りは女の人のための日だけど、 君にも喜んでもらえなきゃ意味無いから!」
「まあ、 それは嬉しいけど……」
「はい! じゃあカンパイ! 誕生日おめでとう!」
「ありがとう。 桃の節句もおめでとう」
女の子の日って言われてる日が誕生日なんて、 正直昔はからかわれたし嫌だった。
でもまあ、 彼女と互いを祝うためにこの日だったのかな、 とか考えられるようになった今では昔より誕生日も好きになれたかな。
今日も彼女のちらし寿司は美味しい。
その土地ならではと言ったら軽くなるけど、 やっぱりザ!その国!なお店には行きたいな。 特に食べ物!
せっかくの海外旅行だからね。 そこならではの美味しいものは食べたいよな。
日本にはない外観にわくわくしながらドアを開ける。 いい匂い。
通された席に座り、 早速メニューを開く。 写真付きなのは旅行してる身にはありがたいよな〜…、 あ、これ美味しそう! これにしよ!
あ〜待ち遠しい〜早く食べたい!
♪〜♪〜♪
夕方のチャイムが流れてきた時に、 ようやく自分が 旅行雑誌を読みふけっていた事に気づいた。
残念ながら、 美味しい料理は実際に行くまでのお預けみたいだ。
あー! おなかすいた!