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7/12/2022, 5:21:19 PM

「これまでずっと、自分の素を出せなかった」

何が素なのかなんて分からない。どうしても、どのタイミングでも取り繕っている気がする。
生きていくには最低限の防御が必要だから。だって誰かに認めてもらう必要があるから。求められる私はピュアで、人懐こくて、お友達が多い、人たらしの人気者だから。そんなの素では無理だから、それでも素の部分からそうなるべきだから、演じているうちに自分の素顔がわからなくなった。でも表の顔をやめて、玉ねぎの皮を剥くみたいに一番奥の本質の部分までどんどん掘り下げていったって、結局何もないんだと思う。出すほどの素もない。つまらない人間だ。だから何も求めないで欲しい。なのに私が私に求めてしまう。素の状態で魅力的な子を見ると、私本当はこうならなきゃいけなかったんだ、って思う。これから先の人生ずっと、いくつになっても、ああなれなかった私として生きていくんだろうと思う。

7/11/2022, 5:56:43 PM

「1件のLINE」

こんなに便利なツールが手の平の中にあって、世界中の人とだってリアルタイムでお喋り出来て、何万もの人に一斉にメッセージを送ることもできるし、めちゃくちゃリアルな画像だって動画だって添付出来るんだから、コミュニケーション楽勝になってもいいはずなのに。
いまだに、隣の人に「ありがとう」「ごめんなさい」と言うだけのことがこんなに難しい。

7/10/2022, 4:55:41 PM

朝、目が覚めると泣いていた
今ままで無かったことだったからすげーびっくりした。悲しい夢でも見たっけかな?と思いながら起きて普通に出社して、少し早めに休んだ翌朝、またも目を覚ましたら泣いていた。その更に次の日も、次の日も。
これはさすがにやばいだろ、ちょっと精神的に参ってるってやつなのでは。もしくは何か重い病気か。そう考えて家人に相談したところ、呆れた顔でこう言われた。
「安眠のために置いてる枕元の玉ねぎ、とりあえずあれを片付けたら?」

翌日から、涙はすっかり出なくなった。

7/9/2022, 5:59:01 PM

「私の当たり前」

ウピはずるい。
まずなんたって実家が強い。「ニシキマグロ」の氏族だから、財産持ちだ。すごく広いタロイモの畑を持ってて、収穫期にはその畑周りを3重に飾りで囲っている。うちなんか中くらいの畑しかないのに、飾り1重がやっとだっていうのに。
採れたタロイモを畑に積んで見せ合う時も、ウピの家のは一番高くまで積まれてるし、大きくて黄色みの強い立派なタロイモを作っている。その上、「帆掛鳥」や「ウソロ木」の下位氏族達から上納される分のタロイモまであるんだから。
そりゃあ、あれだけあったら魅力的な太い腹回りを維持するのだって簡単でしょうよと思うし、あんなに沢山の赤光貝を贈られるのだって当たり前だと思う。別にあの子本人がすごいわけじゃない、ただ運がよくて、親に恵まれただけ。
沢山の呪術を知ってるのもそうだ。あれだって親戚に医者がいるからってだけ。本人の努力も、そりゃあちょっとはあるかもしれないけど。でも私だって医者の親戚がいたらあのくらいは出来ると思う。
私が呪術をあまり知らないのも、良い赤光貝を持ってないのも、細い腹回りなのも、私のせいじゃない。私だってもっと太く魅力的な外見になりたい。皆が羨む物を持ちたいし、賢くなりたい。いつも誰かと比べて自分にがっかりするのは惨めだ。自分が嫌い。私を勝手に評価して見下すやつも嫌い。頭が悪いとか、外見がいまいちとか、なんの権利があって私をジャッジするの?って思う。それを全然言えないで、笑って誤魔化しちゃう自分が本当に嫌。ここから逃げたい。ここじゃないどこかに。私が賢くないことも、美しくないことも忘れられるどこかに。今の自分を全部捨てて、誰も私のことを知らない場所で一度リセットしてやり直したら、上手く行くんだろうか。そうしたら私は、やっと私のことを許して、好きになれるんだろうか。

7/8/2022, 4:59:26 PM

「街の明かり」

人の家々から漏れる明かり、帰り道の気配、お風呂の湯気や晩ごはんの匂い、ゆっくりと暮れていく空。そんなものを感じると「帰りたい」と思う。胸に迫るように切実に、帰りたいと。家に居るときでもだ。どこに帰りたいのかも分からないけど、勝手に湧き上がるあの感情は、「ここじゃないどこかに行きたい」「私じゃない誰かになりたい」にも近い。

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