「また来年来ようね」
そう言った貴方の顔は、どんなイルミネーションよりも輝いていて美しかった。
あの時、もし私が貴方の手を取れば
共に歩んでいれば、何か違ったのだろうか。
冷たい海に涙が溶けてゆく。
震える手で、空を掴んだ。
愛を注いで溢して
愛を注いで受け止めて
愛を注いでゴミ箱行き
愛を注いで返された
愛はなんと脆くて安いのだろう。
今だってホラ
そこかしこに落ちている。
お前のその姿こそが、愛なのだ。
私の為に死んでください。
私の為に無様に死ぬ様子が見たいのです。
その綺麗な四肢が投げ出され、他の人間と同じ、ぼろ切れのような姿になるのが見たいのです。
けれど、美々しく命の灯火を燃やす貴方はとても輝いてみえる。
その姿はこの世でいちばんに見えるけれど、憎らしくもあるのです。
だって貴方は決して私のことを見ないから。
私の胸がきゅうと締め付けられる感覚を、貴方はマッタク知らないのでしょう。
だから、私のために死んでください。
君が知らない男の嫁になると聞いて、私がどんな思いだったか、君は知らないだろう。
男の暖かい腕の中で眠る心地はどんな風だろうか。
私は君の傍で暖かく過ごしていたかった。
ずっと優しく寄り添ってくれていた君は
私に飽きたのか、友達として話してくれる事もなくなった。
君の結婚式の日
私は君を遠くから祝福することしか出来なかった。
生まれ変わったら
君を包む、柔らかい雨になれたらいいな。
結婚式の日
家のポストに入れられた合鍵
優しく微笑みながら、遠くから私の事を見ている貴女。
私は貴女と幸せになりたかった。
ほんとうよ。
もし、生まれ変わることが出来たなら
どんな姿になっても、貴女の傍で眠りたい。
暖かい貴女の傍で。
私の胸の中に、青鈍の心臓が萌えている。
雫の滴る石や一筋の光を落とす木に、それはジンと音を立てて増えてゆく。
雨上がりのアスファルトや、ツルリとしたラムネの瓶などにも。
人間とはとても単純なもので、そういう美しいもの達に心揺さぶられる。
けれど、次の瞬間にはすでに他の物へ興味が向いている。
嗚呼、なんて愚かで愛おしいのか。
私はその一瞬に己の心を燃やしたい。
緩やかに訪れる死を待つ為に。