祈るって、何に?
目の前は真っ暗だと言うのに笑える。
明日だって来るかも分からないのに。
手を伸ばしたって無意味なこの世界で息もするのも億劫だ。
出来るならひっそりとこの暗闇に溶け込みたい。
そしたら淋しい君の隣にひっそりと寄り添うよ。
願うとしたらそんな感じかな。
でもそれを誰に祈ればいいの?
まずはそこからだ。おしえて。
(祈りを捧げて)
びーえるかもしれない注意報。
やっとここまで来た。
もっと遠い日だと思ってた。
正直叶うことないかもしれないと思ってた夢見た舞台。
今までがむしゃらに走って来た。
どんなに小さなステージでも全力で踊って歌った。
身体がボロボロでもステージ上では何もない風に振る舞った。
何度も何度も諦めかけた。
それでも諦めきれなかった。
そのステージが今ここにある。
長年夢見てたソロコンサート。
数えるほどしかない持ち歌に対バンでのコンサート。
それに熱心に通ってくれるファンのみんなにお返ししたかった。
こんなおれを好きでいてくれてありがとう。
早くみんなと自分だけの場所で逢いたい。
そればかり願ってた。
やっとおれとファンと逢えるその時がやって来た。
嬉しい。嬉しすぎて身体が震える。
「おい。大丈夫か?」
椅子に座り込み緊張で周りが見えなくなってたおれを覗き込む心配そうな顔が目の前に現れる。
「…大丈夫だよ」
心配掛けまいと笑って返したけど失敗したようだった。
震える両手をしっかり包まれる。
「お前なら大丈夫だよ」
いつもやんわりと笑って励ましてくれるその声に。
そっと深呼吸して。
「お願いがあるんだけど…」
なに?と首を傾げてしゃがんだままおれを見上げてくる。
「ちょっと抱きしめてくれない?」
思いがけない発言に彼はハッとしたように大きな目をさらに見開いてそれからふっと嬉しそうに優しく笑っておれの肩に大きな手を回してぎゅっと抱きしめてくれた。
「これでいい?」
「も少し強く」
「りょーかい」
さらに力を込められた腕に安心する。
出会った頃もよく戯れ合いの延長だったけどよく抱きしめてもらった。
あの時もいまもちっとも変わらない腕の中のぬくもり。
やっぱりここが1番安心する。
頭をやさしく撫でられ背中も撫でられる。
「大丈夫だよ。大丈夫だよ」
「精一杯頑張って来たよ。お前ならやれるよ大丈夫」
優しい声が響く。
「ありがとう。もう大丈夫」
そう言うと名残惜しそうに身体が離れて優しくあたまを撫でられた。
「思いっきり楽しんで」
優しく笑いかけられて笑顔で返した。
「そこで見てて。ファンのみんなと楽しんでくる。見守ってて」
ひらひらと手を振る彼に笑顔で返して光のなかへ飛び込んでいく。
みんなみんな待っててね。
一緒に笑って過ごそうね。
(遠い日のぬくもり)
びーえる注意注意!!
仲間うちでのおれの誕生日祝いと称してのただの飲み会のその後。
終電無くなったからとおれの家に転がり込んできたアイツと帰りに寄ったコンビニでまたアルコールとケーキを買い込んでふたりで軽く2次会。
楽しくていつもより早めのペースで酔いが回る俺たち。
気のせいかいつもより距離も近い気がする。
目の前には小さいけどちゃんとしたホールのケーキとコンビニ惣菜とアルコール。
せっかくだからとケーキに付いてたろうそくにも火を着ける。
さすがにはたちを過ぎると誕生日ぐらいではそんなに感動する事なんてないけど、これはちょっと来るものがあるな。
手のひらに乗せてゆらゆら揺れる炎を見つめながらちょっとした感動に浸ってると横から声が掛かった。
「願い事しろよ」
「え…いやいいよこの年で願い事とか」
「いいじゃん別に年は関係ないだろ」
ぐっと近づいてきてろうそくの火を覗き込みそしておれを見上げて笑う。
「ちょっとお前近いって」
間でろうそくの火が揺れる。
「何が?」
気にせず近寄ってくるアイツ。わざとやってんじゃないのか?まじむかつく。
「危ないよ、火が点いてる」
「いいからお願いしろよ」
俺の手からケーキを奪い取って目の前に差し出してくる。
「はよ」
「分かったよ」
観念して心のなかで願い事唱えるふりをする。
「はい。願ったよ、いいから食べよ」
ケーキをちょっと押し返してろうそくの火を消す。
ちょっと目の前の男は考える素振りを見せて
「なに願ったんだよ」
訝しげに訊ねて来た。
「別に何でもいいだろ」
顔を背けて言うと、ふぅんと含んだ感じの返事とも言えない返事が聞こえた。
こっちの気持ちも知らないで。
「まぁいいけどほら」
振り返ると目の前にフォークに刺さった切り取られたケーキ。
「自分で食べれるよ」
「いいからいいから誕生日特権。てか食べろ。オレ様がわざわざ食べさせてやってるんだから」
「何だよそれ」
酒の勢いと言うことにしてそのままケーキにかじりついた。
ケーキは甘くて切ない味がした。
「で、何を願ったのよお前は?」
誰が言うかよ。
叶わない願いなんて。
(揺れるキャンドル)
キラキラ光るイルミネーション。
来たるサンタさんの日に向けて飾られたんだろう。
青や白、黄色、赤その他色とりどりのLEDがあちらこちらで存在をアピールしてる。
主役はやはりカップルなのだけど。
1人でその中を歩くのも案外悪くない。
普段は寂しげな街路樹たちもこの時ばかりはいろんな光をまとってとてもきれいだ。
右に左に見惚れて思わず笑顔になる。
「ほんとにきれい」
寒い空気にそっとため息を混ぜる。
きらめく景色のなかに浮かぶ2つの笑顔。
1人はずっと見つめてた人でもう1人はその人が見つめる人。
見つめるその人は男のひとだったから付き合ってるなんて思いもしなかった。
仲のよい友だちなのだと。
仲よくて羨ましいなーって。
でも、2人は付き合っているのだと。聞いてしまった。
よくよく考えてみたら合点が行くことが沢山あって。
何より2人の間の空気が、微笑んでる姿が、あたしが入る隙もないぐらいほんとに1ミリもないぐらい幸せそうでそっと想いに蓋をしてしまった。
いつもはクールそうなのにあんなにふにゃふにゃに笑いかけてるなんて、あたしには太刀打ちできないじゃない。
相手のひとも嫌いじゃないの。
お似合いで本当に応援してしまいたくなる。
でもさ、
「あたしも、ちゃんと好きだったんだよ」
周りのキラキラが滲んで見えた。
(光の回廊)
何度も何度も違うのだと言い聞かせた。
でもやっぱり会うと近付きたくて構ってほしくて触れたくて。
でもこの想いに気付いて欲しくなくて。
それでもその笑顔のなかに居たくて。
はらはらと、降り積もるこの想いは。
もう、恋と…認めてもいいのかな。
錯覚でもなくただただ好きだと。
求めても許されるのだろうか。
返してくれなくてもいいよ。
それでも、僕は君のことが好きです。
(降り積もる想い)