冬至。

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          びーえるかもしれない注意報。



やっとここまで来た。
もっと遠い日だと思ってた。
正直叶うことないかもしれないと思ってた夢見た舞台。
今までがむしゃらに走って来た。
どんなに小さなステージでも全力で踊って歌った。
身体がボロボロでもステージ上では何もない風に振る舞った。
何度も何度も諦めかけた。
それでも諦めきれなかった。
そのステージが今ここにある。
長年夢見てたソロコンサート。
数えるほどしかない持ち歌に対バンでのコンサート。
それに熱心に通ってくれるファンのみんなにお返ししたかった。
こんなおれを好きでいてくれてありがとう。
早くみんなと自分だけの場所で逢いたい。
そればかり願ってた。
やっとおれとファンと逢えるその時がやって来た。
嬉しい。嬉しすぎて身体が震える。
「おい。大丈夫か?」
椅子に座り込み緊張で周りが見えなくなってたおれを覗き込む心配そうな顔が目の前に現れる。
「…大丈夫だよ」
心配掛けまいと笑って返したけど失敗したようだった。
震える両手をしっかり包まれる。
「お前なら大丈夫だよ」
いつもやんわりと笑って励ましてくれるその声に。
そっと深呼吸して。
「お願いがあるんだけど…」
なに?と首を傾げてしゃがんだままおれを見上げてくる。
「ちょっと抱きしめてくれない?」
思いがけない発言に彼はハッとしたように大きな目をさらに見開いてそれからふっと嬉しそうに優しく笑っておれの肩に大きな手を回してぎゅっと抱きしめてくれた。
「これでいい?」
「も少し強く」
「りょーかい」
さらに力を込められた腕に安心する。
出会った頃もよく戯れ合いの延長だったけどよく抱きしめてもらった。
あの時もいまもちっとも変わらない腕の中のぬくもり。
やっぱりここが1番安心する。
頭をやさしく撫でられ背中も撫でられる。
「大丈夫だよ。大丈夫だよ」
「精一杯頑張って来たよ。お前ならやれるよ大丈夫」
優しい声が響く。
「ありがとう。もう大丈夫」
そう言うと名残惜しそうに身体が離れて優しくあたまを撫でられた。
「思いっきり楽しんで」
優しく笑いかけられて笑顔で返した。
「そこで見てて。ファンのみんなと楽しんでくる。見守ってて」
ひらひらと手を振る彼に笑顔で返して光のなかへ飛び込んでいく。
みんなみんな待っててね。
一緒に笑って過ごそうね。


              (遠い日のぬくもり)

12/25/2025, 9:59:37 AM