良いお年を
「いい1年にするぞ」
「まさかの断言系」
「『したい』じゃなくて断言したほうが叶いやすいって聞いたから、俺はいつも断言するようにしてる」
「「なるほど」」
ここで物語を綴り始めたのがいつだったかはあまり覚えてないけど、いつも読んでくれるあなたも、たまたま巡り逢えたあなたにも、最大級の感謝を。
大丈夫、来年も笑っていたらなんとかなるよ。
(いつもの3人シリーズ)
(来年はもうちょっと更新頑張ります)
1年間を振り返る
年の瀬だからこういうお題ありそうだなーと思ってたら、今日なのね。あと数えるほどしか残されていない2024年、思い浮かぶ言葉といえば−−
「生き延びた」
「姐さん……」
「お前、毎年言ってねえかそれ」
「君たちだってね、20歳まで生きられないよっていろんなところから言われてみ? 年の瀬迎える頃に同じこと思うから」
短命予言を舐めんじゃないよ。尤も、誕生日から1年を数えるのか、1月から12月までを1年とするべきかって問題はあるけど、年の瀬ってわかりやすい時間の節目じゃん。誕生日よりも振り返りやすい気がする。
「かく言う君たちはどうなの?」
「本いっぱい読めた」
うん、自他共に認める本の虫の後輩らしい。ちなみに、去年は「思ったより読めてない」ってしょげていたから頑張ったんだろうね。よかったわ。
「じゃあ、次。弟」
「いっぱい思い出増えた。来年はそれを更新する」
「なんかぼんやりしてない? てっきりレモンとか動物とかで攻めてくると思ってた」
「そのふたつはもはや俺のルーティーンだから、改めて振り返るとか反省するとかはない」
そういやぁ、弟からカメラ向けられることが特に多かった気がするなぁ。このあいだ、偶然彼のスマホを覗いたらやたらと撮影系のアプリが多くてちょっと引いた。どんだけ撮影に本気なんだ……。
「あ、でも、強いて挙げるなら、今年はやけに怪異の遭遇が増えたかな?」
これはいいことなのか、悪いことなのかって聞くまでもないか。私たちまとめてお祓いしてもらったほうがいいんじゃなかろうか?
「活動範囲が増えたから、増えるのは当たり前だよね」
「そうだな。ましてやお前がウェルカム状態だから、そりゃあ増えるだろ。来年はもっと遭遇率上がるんじゃね?」
「素直に喜べないなーいろいろと」
別に嫌いじゃないけどさ、寿命すり減ったわみたいなのはなるべく少なめでお願いしたいなぁ。
……無理? そっか。
まあ、いつもの3人でいる限りはなんとかなるか。
(いつもの3人シリーズ)
(若干メタい)
泣かないで
「あたしは人様に『泣かないで』ってはあんまり言いたくないかな。悲しい時だってあるじゃん」
「まあな。TPOをわきまえなきゃいけない時もあるから、いまはこの場で泣くなって意味で言いたくなる気持ちはわかるけど」
「泣いていい場所だったらいいってことでしょ。涙活って本で読んだよ。人間いくつになったって泣くのも大事なんじゃないの?」
こういうお題、本当に私たちは向いてないなと思うけれど、まあお気持ち表明的な短話をば。
そりゃあ、時と場合によっては泣けない時だってあるけどさ、別にいいじゃん。泣いたって。人間だもの。
取り返しがつかなくなるぐらい壊れてしまうよりだったら、情けなくても声を上げて泣けるほうがよっぽどいい。
もっと言わせてもらえるなら、あなたが泣いていてもずっとそばにいてくれる人が、泣き終わるのを待ってくれる人が、「スッキリした?」ってあとはなんでもないふうに微笑んでくれる人が、ひとりでもいたらそれ以上の幸せってないと思う。
「後輩が泣くとこはあんまり想像つかないけど……」
「奇遇だね。オレも」
「自分で言うなや」
「弟や姐さんだって泣くとこある?」
「「あるよ」」
「たとえば?」
「「推しが死んだ時」」
「それはしょうがないね……」
(いつもの3人シリーズ)
冬のはじまり(来たるクリスマスに浮かれてる)
外の空気がだんだん冷たくなってきた。
落葉樹の葉っぱが地面に落ちて、風に吹かれてころころと転がっている。
暗くなるのが早くなってきた。
色鮮やかなイルミネーションや、赤と白がトレードマークのみんな大好きサンタクロースをあちらこちらで見かけるようになってきた。
以上、思いつく限りの、
「「冬がやってくる」」
「言われなくてもわかる」
後輩は今日も季節に塩対応!!
「クリスマス楽しみじゃねーのかよ」
「別にはしゃぐ歳じゃないし」
「あたしたちより碌に祝ってない奴がなーに言ってんだか! あんたまだまだガキンチョでしょ!」
「それ言ったら、1歳違いのあんたたちだってガキンチョじゃないの?」
「「そうだよ」」
「いつもは子供扱いされると怒るくせに……」
そんなに呆れなくてもよくない? あんな賑やかなイルミネーション見たら、テンション上がるでしょうが。
超余談だけど、欧州は日本よりも暗い時間がずっと長いから、陰鬱になりそうな気分と雰囲気を吹き飛ばすためにクリスマスを全力で楽しむよ! オレンジ飾ったりとか、ちょっとずつ切り分けて食べるシュトーレンとかいろいろなお菓子を家で用意して、あとはホットワインとかあれば最高! あ、ちゃんとアルコールは飛ばして飲んでるよ! まだ未成年だからね、私たち。
「ちなみに、ふたりとも、サンタクロースって信じてるの?」
「なに言ってんだよお前。サンタはいるに決まってんだろ」
「サンタは小さいおっさんよりも昔から信じられてる妖精だから」
「え、宗教?」
「そうだよ。聖ニコラウスが起源だからね」
「オレが言ったのそういう意味じゃなかったんだけど。……あれ、待って。ふたりともさ、実家は日本の神様を祀ってるんだよね? なのにクリスマス祝うの?」
「「そうだよ」」
舐めたらあかんよ、うちの祖国の闇鍋宗教観を。八百万も神様がいるんだぞ? そりゃあ、いまさら新しい神様が増えたって誰も気にしないのよ。サンタクロースは神様じゃないけどね。
まあ、でも、日本のクリスマスって、「祝う」っていうより「はしゃいでる」のほうが正しい気がしなくもないけどね。
(いつもの3人シリーズ)
微熱
ピピッと無機質な電子音が、私の左脇に挟んだ体温計から聞こえてきた。
「熱どうだ?」
「……37.5℃」
「微熱だな」
「ギリギリセーフですー! 平熱高いもん!」
「うちの事務所ではアウトですー」
下宿先の大家兼私のアルバイト先の所長によって、強制的にベッドに寝かせられた。
「別にいいじゃん。人に会わない雑務こなせばうつすリスクないでしょ」
「あのな、微熱はこれから熱が上がるって兆候だぞ。早急に寝ろ!」
なにもこんな時に限って急に保護者ヅラしなくても良くない?
「当たり前だろ。お前の両親からお前を預かってんだ、そりゃ面倒も看る」
「家賃かかってるもんね」
「おーおー捻くれお嬢様はさっさと寝ちまえ」
いや、でもまだ微熱だし。本当に熱上がるかわかんないし−−と反論しようとしたら、所長が部屋を出て行ってしまった。本気で「寝ろ」ってことじゃん。そう思ってスマホに手を伸ばし、弟と後輩も集まっているトークルームを開く。
「微熱でバイト出勤させてくれない」
「当たり前だろ。俺らにうつすな」
「お大事に。首にネギ巻くといいって聞いた」
お、おう……。おかしいのは私のほうか。後輩、あなたいったいどこからその知識を得たの?
しょうがない。今日は大人しくしようか。
掛け布団を引き上げて本格的に寝ようとしたら、うとうとしてきたタイミングで所長が部屋に入ってきた。せめてノックしてから来て?
「……なんでネギ持ってんの」
「安心しろ。今日の添い寝担当だ」
いや、臭くて寝れんわ。嫌がらせじゃんかよ。
(いつもの3人シリーズ)