明日さ、もし晴れたら
新しい靴をおろそう。新品の真っ白なスニーカーで、
明日さ、もし晴れたら
ひまわりを見に行こう。僕たちも隠れちゃうような高い黄色の世界で2人きりできすをしよう。
明日さ、もし晴れたら
美味しいものを食べよう。熱々の焼きそばとか、冷えたラムネで飲み込んだり、
明日さ、もし晴れたら
海に行こう。海水浴場なんかじゃない、岩場の多いあの日の海で、
明日さ、もし晴れたら
花火をしよう。浜辺の風に吹かれながら、僕らの精霊馬を燃やそう。
明日さ、もし晴れたら
僕らを招く手を取ろう。夏といえども冷えた海水に身を任せて、はぐれないようにしっかり手を繋いで。
明日さ、もし晴れたら
もし晴れたら
2人でいる時に相手の知り合いに出会った時のあの薄ら寒い時間が嫌いだから
だから、一人でいたい
私もあなたになりたかった。
濡羽色の髪、黒のビー玉の目、消えそうに透き通る肌、桜の落ちた頬、自信の積もる表情、白い陶器で作られたような腕、柔い手のひら、雨のように伸びた背中、一滴で広がる水面の様な声、晴天の陽射しのような清らかな所作etc...
私には無い美しいもの達、
私には手に入らない美しいもの達。
そんな貴方の隣に居る劣等感と、
少しの優越感。
「最悪。」
天気は雨。
今日は朝から散々で、本来起きる時間から2時間も前に目が覚めて、それから10分おきに目が覚めて、結局寝た気はしなかった。寝起きから頭がズンと重くて鈍い痛みが鼓動を打つ。胃が受け付けなくて朝ごはんは抜き、2日前から始まった女の業のせいでお腹も痛い。カッパ着てチャリ漕いで家を出たはいいがだんだんシャレにならないくらい体調が悪くなってきて、チャリを降りてコンビニに逃げ込み、今に至る。
イートインスペースに雪崩込むように座り、突っ伏す。
こういう日に限っていつも途中で合流する奴らは早く家を出たらしい。もー最悪。もー嫌だ。今日はもう帰りたい、帰って寝てたい。朝からなんかダメだな今日は。
最悪。
何度も口にする。
これが最悪であれと、これ以上悪くなってくれるなと願いを込めて。最悪、と思う。突っ伏して視界が暗転すると気が緩んだのか眠気が襲ってくる。こんなとこで、最悪だ、最悪だなぁ。と思いながら私は意識を手放したのだった。