私は無我夢中で走り続けた。
ライバルに追いつく為、追い越す為、そして『伝説』に追いつく為。
気づけば私の走った軌跡は『伝説』と呼ばれるようになった。
今は現役を退き、後輩たちのサポートをする立場。
君達こそ──きっと私を、私達を越すことができるだろう。
私はサポートする側だが、私と君たちの時代を導こう。
全身全霊をもって、全力で君たちを支えてみせよう。
今は届かなくても、絶対に届いてみせる
追い抜いてやる
私が見下ろしてやる
そう思って、必死に今まで走ってきた。そしていつの間にか、いや…確実にあなたは遠ざかっていく。
ーーそしていつの間にか、あなたは私の手の届かない、届くはずのない所まで走っていってしまった。
どうして、私はあなたにいつまでも届かないの。
夜、三日月と星々の浮かんでいる肌寒い夜に散歩をしている
遠くには煌めく街灯、ビルの灯り、車のヘッドライトの光、音
全て日常の音。何も変わらない、いつも通りの音。
けれどそんな日常の音を聞けるだけで、なんだかいいなって思う。
今日も無事に終えることができた。エピローグを迎えることができた。他に何も出来なくても、悪いことがあってもそれでいいのかなって、思う。
学校が終わり、トレーニングが終わった。
空はもう暗く、寮に入ると疲れた顔の同期たち、先輩、後輩たちとすれ違った。
もちろん、私も疲れた。けれどもっと強く、速くなりたい。あいつに、あの子に追いつくために。いや、追い越すために。
そして再びジャージに着替え、寮の外に出た。ひんやりと肌を突き刺すような冷たさ、少し息を吐くと白く濁る。空を見上げると澄み渡る星空。
さぁ、私だけの追加トレーニング開始だ。
最速を、1番を目指すために。あの星たちに手が届くほど、速く駆けるために。
『伝説』をただひたすら辿って駆けてきた。
けれどその旅路はあまりに無謀で、「届きそう」という言葉すら零せないほど遠すぎた。
そして君と出会い、競った。
自然と以前より前へ自由に、大きく駆けることが出来た気がした。
好敵手ーーライバルである君と競い合っているうちに、いつしか「伝説を越えた存在」と呼ばれるようになった。
あの業界を去って尚私の名、君の名は語り継がれているらしい
さぁ、始めようか。新たに君と紡ぐ物語を。
新たに私たちをも越える時代を創る者たちに、
伝説を───継ぐものたちへ