1つだけ
私には1つだけ宝物と言える秘密がある。
神様と結婚しているのだ
薬指には見えない結婚指輪をしており
背に大きな油絵用のパレットと
弓矢を入れる筒をキューピットのように担いでいるが中には矢の代わりに絵筆が入っており
腰には絵の具が入った袋を縛っている。
服はギリシャ神話のローブをまとって
アルテミスのような姿をしている。
大理石の立派な椅子に座った美しく、常に少し皮肉な微笑みを浮かべ、堂々とした芸術の神様の前で
(芸術の神様は男の芸術の司には自身の理想の最も美しい女性、女の司には美しい理想の男性に見える)
何万人もの大勢の妻や夫達と一緒にうやうやしく、かしずいているのだ。
小さい頃からこのイメージが頭に入っており、挫けそうになった時はこの光景を思い出し
夫であり、神である者に、芸術家としての使命を果たさせて欲しいと守護を祈り、敬虔な使徒として生かされている幸せを感じつつ、涙しながら眠るのだ。
孤独も苦しみも悲しみも怒りも芸術の神に捧げる貢物なのだ。
私は忍びの者である。
笑う者は笑うが良い。
たいせつなもの
4月1日に大事に育てたぬか床がカビた。
介護で家から出られないので、健康に留意した料理にのめり込み、一昨年の7月からはじめた
たいせつなものだったのに。
仕事に出るようになって疲れ果て、2日かきまわさなかったら
上にヌルヌルしたゼリー状の膜が張り、よく見ると霜柱のような白カビも少しあるではないか!
匂いをかぐと
金属のような、絶対食べたらいけない異臭がする……泣く泣く捨てようとビニールに入れていたら
底の方は無事な匂いがする
しばし迷ったが
紅麹事件が今騒がれているし
未知のカビは怖いなって思い直し
ありがとうございました。
とつぶやきながらお別れした。
とても悲しい。
4月2日の今日は親友の誕生日である。
久しぶりにLINEをして、一緒に美術展を見に行く約束をした。
新しい季節に大切なものを失ったが
また、大切な友達と再会する。
毎日を大切だった失ったものたちに感謝して生きようと思った。
ハッピーエンド
その人の人生がハッピーエンドだったかって事は
その人の価値観とか人徳とか幸福感で本人が決めるものであって
他人がどうこう言う事じゃないと思っていました。
子供の頃、人魚姫の絵本が大好きで
海の泡になった人魚姫の人生が、悲しいけれど
なんて美しいんだろうって何度も何度も読んだし
『レ・ミゼラブル』のエポニーヌが
好きな人の腕の中で死んだのも、なんて悲しくて純愛で美しいんだろうって泣いたし
ある意味、凄いハッピーエンドだと思ったので
自分は醜いから、好きな人には好いてもらえないだろうけれど
好きな人の為になって死ねたら本望だなぁって思っていたんですよ。
しかし!
ある時、優しくしてくれる人が現れて、とても大事に扱ってもらったら、
めちゃくちゃ幸せだったんです!
これは、なんて幸せなんだろうってね。今まで知らなかった幸せの上の上の上があったんですよ!
私を大事にしてくれた男性は
結局、偽りの愛だったんですけどね
勉強になりましたよ。
他人の犠牲になって死ぬよりも、自分を大事にした方が幸せになれるし、
他人も幸せにできるかもしれないんだってね。
今、不幸な若い人に知って欲しいんですけど
自分が主役で大事にされる人生も考えた方がハッピーエンドになりますよ。
見つめられると
私は昔、ブラック企業のコールセンターにいました。
電話中に
上司がこちらを見つめています。
おや?何でしょうか?
アイコンタクトされている…。
その都度、見つめ返していました。
「いるかさん、いつも俺の事見てるけど、俺の事好きなの?」
みんなの前で大声で言われてしまいました。
「え?!課長代理が、見ていらしたので、何かご用かと思い、見返していました。」
赤面して私が言うと
お調子者の後輩の男の子が
「やーい、課長代理がいつもいるかさんの事見てんじゃんかよ、課長代理がイルカさんの事、好きなんじゃね?ギャハハ!!」
課長代理は
「あー、視線てさ、なんか感じるよね、わかるー。」
「……はぁ。」
長時間労働で疲れてみんな頭が小学生になっていたんだと思います。
My Heart
好きな人の写真をネット検索で集めて
パソコンのフォルダにしまい
My Heartってタイトルをつけて
1日の終わりに
ベートーヴェンの月光を流しながら
よく眺めたものです。
そして、その写真をケータイの待ち受け画面にしていたのです。
ある日、勤めていた家族経営の会社の社長の息子さんの
お母様から
「うちの息子とお見合いをしない?」
と、言っていただけていたのですが
恐れ多くてお断りしていたのです。
しかし、休み時間にケータイを開いた時に
課長にケータイを覗かれた気がしたら
課長がハッ!としてどこかへ……
ほどなく、私は腱鞘炎で商品を取り落としてしまい
部長から自主退職を促されました。
これは予測ですが、
「待ち受け画面に彼氏らしき男が写っていましたよ。」
と、課長が社長の息子さんのお母様に言いに走ったのでは……と
最初から家族経営の会社なので、お嫁さん候補として雇われていたのではないかと……
そんな気がしました。
待ち受け画面の男性は彼氏じゃなくて、
片思いの整骨院の先生でした。
今思えば、ただの色恋営業だったのです。
悲しい。
わかっていたからベートーヴェンの月光を流してセンチメンタルに恋しがっていたのでした。