物憂げな空は
あの人を思い出す
優しい伏せたまつ毛
物憂げな表情
細長い白い指
静やかな所作に隠した野心
情熱を隠した薄い唇
あの人は今
どこの空
小さな命
ジュウシマツを飼っていた。
名前はクロちゃん
とてもスリムでかっこいい鳥だった
粟と小松菜しか食べない
トイレの場所も決めており
とっても綺麗好き
人間に例えたら
痩せた玄米菜食主義の優しいおじさんだ
歌って踊ってかっこよく飛ぶ
燕尾服を着たような模様で
とーってもハンサム
私のなでなでマッサージが大好きで
綺麗な羽を私が
そっとつまんで広げて見ても
見ていいよ、綺麗でしょって見せてくれて
微笑んでるみたいな表情で
温かくて賢くて
大好物は南アルプスの天然水
長生きしてくれたけど
死んじゃった時は大泣きした
何年も彼を思い出したら恋しくて涙がポロリ
今も涙が
最近、地域猫ちゃんが来た
とてもかわいい
お隣の屋根で寝ていて
たまに家の屋根にいる
かわいいねー!
と、すけべ親父が若い娘さんに
デヘヘと近づくように
ついつい猫ちゃんに言ったところ
ゆっくりギャロップしながら逃げて行ってしまう
しつこいすけべ親父化した私は
しつこく猫ちゃんを見かけるたびに
かわいいねー!かわいいねー!
を繰り返して、写真やビデオを撮りまくっている
まるで猫ストーカーだが
我慢して、触らずになるべく早く去る事にしていたら
逃げなくなった。
しかし、舌をペロヘロペロペロしている。
??
調べてみたら、困惑しているそうだ。
やたら褒められても、
間が持たなくて頭をポリポリかいているような感じなのであるらしい。
よけいにかわいい。
お隣さんがたまにご飯をあげたら庭に住み着いたらしい。
私の家も雨戸を開けて下を見たら屋根にいた。
かわいいー。
お耳をピクピクして挨拶してくる。
お隣さんのつけた彼女の名前もクロちゃんだそうだ。
ハチワレ猫ちゃんの別名はタキシードキャットなのだそうだし
昔飼っていたジュウシマツと名前も模様も被るではないか。
彼女の存在はとにかく癒しである。
かわいいかわいい愛してる。
枯葉
枯葉舞い散る 舞い落ちる
見ればシワシワ 色とりどり
カサカサパサパサ
クルクルリ
風に遊ばれ連れ去られ
土に還って肥やしになって
種を育てて ヌクヌクリ
パッと双葉を産んだなら
ニョキニョキ伸びて若葉になって
嬉しや嬉し花盛り
頑張り実がなり
食べられる
美味しく食べたその後は
種をまたまた植えてくれ
増えて生まれて楽しいな
バレンタイン
我が名はバレンタイン伯爵
バニラの肌にチョコレートの血潮が流れる吸血鬼だ!
今宵も乙女の熱き血潮と魂を喰らわん!
自慢の長髪を靡かせ、美しい真っ赤なルージュをひいた薄い唇をにっこりさせて
純白の牙をのぞかせ、マントを翻すと
お手製ケーキと特製紅茶をお盆に乗せて
颯爽と各テーブルにサーブするのだった。
「店長!お電話です!」
こら!設定を崩すな!
厨房にこだまするバレンタイン伯爵設定の店長の声
お客様のクスクス笑う声…
コンセプトカフェ
紅茶の美味しい喫茶
エバーレッドテンダネス
今日はバレンタイン限定イベント中
本日の特別メニューは
ハート型のチョコからラズベリーの血が溢れちゃう乙女の生贄ケーキと
真紅のバラの花を浮かべた紅茶だよ
(セイロンティーにバラのジャムを添えたロシアンティー)
セットで1500円
我こそは吸血鬼の花嫁になりたいって乙女は伯爵に会いに来てね。
特別メニューを注文していただいた乙女には
店長…じゃなくてバレンタイン伯爵のウインクと投げキッスのサービスがあります。
あなたのハートチョコに齧り付きチェキ1枚1000円
もあるよ!
元ビジュアル系バンドマンのボーカルの店長のバレンタインイベントは楽しそうであった。
待っててね
お気に入りの紅茶の美味しい喫茶店で
今日は何にしようかな
ダージリンの
ファーストフラッシュか
セカンドフラッシュか
迷うなぁ
それともアッサムにしようかな
コク深いミルクティーも良いなぁ
爽やかなヌワラエリヤも良いなぁ
最近、また太っちゃったから
やっぱりストレートティーが良いかなぁ
迷うなぁ
「こんにちは、今日はねー、おまかせにしない?」
マスターがニコニコしながらそう言うので、すっかり嬉しくなってしまった。
え!面白そう!じゃ、それとスコーンお願いします。
「ちょっと待っててね。」
運ばれてきた紅茶は
まるで夕焼けをそのままティーカップに注いだように
美しいオレンジ色だった。
飲んだ瞬間、鮮烈な香気が鼻を抜け、温かな気持ちになった。
爽やかで紅茶の渋みと甘酸っぱさが絶妙にマッチしていて、思わずため息が漏れた。
あぁぁぁ美味しい!
「ユズとてんさい糖でジャムを作ってアールグレイに入れたんだよ」
へぇ〜綺麗な紅茶ですね。世界中の夕暮れを溶かした紅茶って名前にしたら良いのでは?
「あははは、ちょっと恥ずかしいよ、僕のセンスに似合わないよ。」
急にマスターが真顔になった
「ところで、今日このお茶の名前を付けたんだから、もう今日から君がマスターね。」
え?……
視界がグルグル回り出した
「かかったね。メニューを考え出したらもう逃げられないよ〜。」
「マスターを交代してくれてありがとう〜。」
「次の創作紅茶メニューの名前を考えるお客様が来るまでお店から出られないシステムなんだよ、ガンバレ〜。」
マスターの声が薄れて行った。
気が着いたら僕がカウンターの中で紅茶を淹れていた。
店の奥の扉を開けると広大な果樹園が広がっており、四季折々の果実が季節を度外視して実をつけていた。
色とりどりのバラや香りの良いスパイスなども生えている。
隣の扉は広大な各種紅茶を取り揃えた棚がズラリと並んでいた。
お菓子作りの材料もタップリ有る。
新メニューを考え放題では無いか……。
ここは異空間の紅茶天国だ。
悪くない。新マスターはニヤリとした。
いらっしゃいませぇ〜。
世界中の夕暮れを溶かした紅茶はいかがですか?