りくのいるか

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待っててね



お気に入りの紅茶の美味しい喫茶店で

今日は何にしようかな

ダージリンの

ファーストフラッシュか

セカンドフラッシュか

迷うなぁ

それともアッサムにしようかな
コク深いミルクティーも良いなぁ

爽やかなヌワラエリヤも良いなぁ

最近、また太っちゃったから
やっぱりストレートティーが良いかなぁ

迷うなぁ

「こんにちは、今日はねー、おまかせにしない?」

マスターがニコニコしながらそう言うので、すっかり嬉しくなってしまった。

え!面白そう!じゃ、それとスコーンお願いします。

「ちょっと待っててね。」

運ばれてきた紅茶は

まるで夕焼けをそのままティーカップに注いだように

美しいオレンジ色だった。

飲んだ瞬間、鮮烈な香気が鼻を抜け、温かな気持ちになった。

爽やかで紅茶の渋みと甘酸っぱさが絶妙にマッチしていて、思わずため息が漏れた。

あぁぁぁ美味しい!

「ユズとてんさい糖でジャムを作ってアールグレイに入れたんだよ」

へぇ〜綺麗な紅茶ですね。世界中の夕暮れを溶かした紅茶って名前にしたら良いのでは?

「あははは、ちょっと恥ずかしいよ、僕のセンスに似合わないよ。」

急にマスターが真顔になった

「ところで、今日このお茶の名前を付けたんだから、もう今日から君がマスターね。」

え?……

視界がグルグル回り出した

「かかったね。メニューを考え出したらもう逃げられないよ〜。」

「マスターを交代してくれてありがとう〜。」

「次の創作紅茶メニューの名前を考えるお客様が来るまでお店から出られないシステムなんだよ、ガンバレ〜。」

マスターの声が薄れて行った。

気が着いたら僕がカウンターの中で紅茶を淹れていた。

店の奥の扉を開けると広大な果樹園が広がっており、四季折々の果実が季節を度外視して実をつけていた。

色とりどりのバラや香りの良いスパイスなども生えている。

隣の扉は広大な各種紅茶を取り揃えた棚がズラリと並んでいた。

お菓子作りの材料もタップリ有る。

新メニューを考え放題では無いか……。

ここは異空間の紅茶天国だ。

悪くない。新マスターはニヤリとした。

いらっしゃいませぇ〜。

世界中の夕暮れを溶かした紅茶はいかがですか?

2/13/2024, 3:14:59 PM