とりとめもない話
私には1人親友がいる
物凄く真面目そうだが中身は変わり者だ
私は子供時代からずーっと太っており、
高校生になっても全てを絵に捧げたように
女を捨てた生活を送っていたので
見栄えも悪く不潔だった。
風呂に入る時間を削って絵を描いていたのだ
母から
「おまえ、女子高生なのに、おじさん臭い!ヤバいよ!」
と、嫌われていた。
毎晩、2時間位しか寝ずに絵を描いて勉強もした。
生意気に
ナポレオンが3時間睡眠だったから、
私の方が勝ったわ、とか思っていた。
もう友達も彼氏も要らないから
絵の才能さえ貰えれば悪魔に魂を売っても良いかなと思って
そこだけは女子高生の乙女心を発揮して
ファウストの悪魔を待っていたが
来る訳が無い。
代わりのように
その友達が来たのだった。
彼女が私に近づいて来たのは体育の時間で
私が、喘息の薬が身体に合わず、興奮して
「ブヒヒヒヒヒヒィーン!!」
と、豚のような笑い声を
体育館に高らかに響かせてしまって
顔を真っ赤にしていたら
「りくのさん、今の馬のモノマネ、凄かったですね!
ところで、美大受験するんですよね、
一緒に同じアトリエ(画塾)に行きませんか?」
と、言ってきたのだった。
(豚のモノマネって言われなくて良かった)
こんな真面目そうな人と一緒に行くのは緊張するなぁ
と、思ったのもつかの間
彼女は面と向かってめちゃくちゃ私の悪口を言ったり
時々、わざと喧嘩をふっかけて来たり、叩いて来たり
かなりの強者で
その上
描く油絵の色使いが独特に美しい天才だった。
(詳しく書くと全20巻位の話になるので自粛)
それぞれ違う美大に行き、違う人生を歩んでいるが
時々LINEが来ると時間を忘れてとりとめのない話をしてしまう。
私が手術する前もMRIの写真を見せろと要求が来た
「なるほど、こりゃあ腹に悪魔がいるわ。」
と、言われ
遅れて来た悪魔なら代わりに何か幸せな対価の契約を……あ、歳をとったから対価にならないのか…… 保険契約みたいだな……チッとくだらない空想をした。
手術後に
「前から誰か手術した人に贈ってみたかったんだよね。」
と、『切腹最中』を送ってくれた。
なんてシャレが効いたプレゼントだ!
何をされても許せるのは彼女だけだ
彼女は今年、フランスの有名な展覧会に版画で入選し
私は今、母の介護をしながら貧乏イラストレーターをしている。
凄くよく描けたと思い、ツイートしても、呪われているかのように、良いねが伸びない。
身体中痛くて、自信も無くなった。
詰んだなぁ、こんなはずじゃ無かったのになぁ……
とりとめが無くなったので
ここで……。
風邪
凄く寒い日は気弱になっちゃう。
そう言えば
東洋医学とか色々な本を読んだり話を聞いたりして覚えた話なんだけど
風邪をひくのは
クルクル回る風の邪気が首の後ろにあるツボの
風門(ふうもん)から入るからなんだって
寒くて凍えたり 怒ったり、悲しんだり、怖がったり、がっかりしたり、疲れすぎたりで
気を弱らせると入って来ちゃうんだって
風邪って妖怪みたいだね。
荒唐無稽だって怒る人はいるかもしれないけど、
ちょっとファンタジーみたいで面白いよね
そういう考えもあるんだなぁって、お話。
雪を待つ
雪は綺麗だ
潔い
清潔感のある白衣のように高貴で
冷たくて痛いのも
おいそれと近づけない感じも良いよね。
昔、雪を被った富士山みたいな人が好きだったな。
雪を被るとみんな特別になる。
だからみんな雪を待つのか。
イルミネーション
昔、図書館で働いていた時に
お昼休みは先輩といつも一緒で
お弁当を食べていたら
「私は12月はイルミネーションを見に行くのが好きなのよ〜、あんたも、私より若いんだからさ〜、こんな楽しい季節はどっか見に行きなよ〜。」
そうか、なるほどな〜
近場でたまたま行き当たったイルミネーションが
ピンク街で有名な町の川沿いの桜並木だった
桜の季節こそ、最高に豪華で美しいが、
今は
裸になった桜の木にピンク色の豆電球が無理矢理巻き付けられてチカチカしていた。
なんか……毒々しくて
露骨なイルミネーションだなぁ……
綺麗だけど……
場所柄から、華やかだけど、お色気できわどい服を着て働かされている女の子を連想してしまい呆然とした。
興味本位で近づいた瞬間
「あの〜……こ、こんばんは、
ぼ、僕、この会社で内定をもらったんですけど、
このアンケートをやらないと、
内定取り消しに……
住宅についてアンケートを、
あ、待って、
待って〜!」
泣きべそをかいた青年が追いすがって来た
慌てて猛ダッシュで逃げる羽目に
クリスマスのイルミネーションに引き寄せられて来た人に
哀れな青年を使ってアンケートをさせるなんて
とんだアリジゴク営業だ!
裸の桜の木にピンクのイルミネーション付けたら
枯れ木がピンクにチカチカしてるだけだよ
青年は可哀想だったなぁ……。
可哀想な青年をダシにお客さんをいっぱい釣るんだなぁ。
クリスマスに地獄を見ちゃったよ。
愛を注いで
私は残念ながらずっと独り身なのだが
鳥の男性には愛されていた。
兄が飼っていたジュウシマツのクロちゃんだ
彼は例えるならタキシードを着た菜食主義の痩せた中年紳士のような鳥だった。
非常に綺麗好きで
トイレの場所も決めており、
他のジュウシマツは喜んで飲んだ豆乳も嫌がった。
クロちゃんは兄の髪の毛や髭をピッと引っ張って
毛ずくろいしてあげて愛情表現をしていた。
私はある時、思いつきでクロちゃんに、ミネラルウォーターを中指につけて、しずくにして飲ませてあげようとした。
クロちゃんは首を振って眉根を寄せるような嫌な表情をし
「いえ、結構です。」
と、丁寧に断わっていたが、私が何回も勧めたところ
「仕方ないですね、少しだけですよ?」
と、嫌々、お世辞で飲んでくれた
パッと表情が変わって
「おー!美味しい!もう少し、いただけますか?」
おずおずと、上目遣いで、さっき水を滴らせた指を優しく突っついた。
私は喜んで、彼の好物の南アルプスの天然水をあげた。
それからジェスチャーでクロちゃんは私とコミニケーションを取るようになって
クロちゃんから私にマッサージをして欲しいところを押し付けてきたり、
私が指で羽を広げても見ても嫌がらず
「僕の羽、綺麗でしょう?どうぞどうぞ、見て良いですよ。」
と、でも言っているかのように穏やかに微笑んでいるようだった。
ある時は
「温かいから直に手に乗せて」
と、
掌の上に乗せたフン避けのティッシュを嫌がって
私の見ている前を
右に左にぴょんぴょん飛び
珍しく私の手から逃げたので、
おや?と、様子を見ていたら
ちゃんとトイレを済ませてから
「これで安心でしょう?」
と、掌に飛んで来た時は、あまりに賢くてびっくりした。
言葉こそ通じないが、ほとんど意思の疎通が出来たので
私はこっそり、クロちゃんのくちばしにキスをしていた。
怖かったかな?とクロちゃんの表情を見てみると
気のせいだろうが、ウットリしているように思えた。
(鳥だけに……)
ある日、
クロちゃんが、私の肩にとまって、歌いながら踊っていた。
ご機嫌だなぁと思っていたら
クロちゃんが歌の途中でほっぺをつんつん優しく突っついた、
「え?なに?」
呼ばれた気がしたので
クロちゃんの方を向いたら
唇にくちばしで軽くトン、トン、トン
と……
キスしてくれたのだった!
ひゃああ
照れますな。
クロちゃんは歌を真剣に聴いて無かったりすると、
目を釣り上げて、
「今の聴いて無かったでしょ?最高傑作だったのに!」
めちゃくちゃ怒っていたので、歌に愛を注いだプロシンガーだったのだろう