勝ち負けなんて
勝ち負けなんて、一所懸命やった結果ならなんでもいいよね。と、私は思っていた。
息子が6年生のとき、クラス対抗バスケットボール大会があった。彼のクラスは2位だった。2位ならまぁまぁだねと、私は祝福モードでいた。
ところが、担任は体育教師で、勝ち至上主義だった。生徒の前で「優勝しないと意味が無かったんだよ。2位の賞状なんか要らないよな」と、賞状をビリビリに破り捨てた。
帰ってきた息子にその話を聞いて、私はショックを受けた。そんなに、優勝って大事なの?朝練して、試合も頑張って一所懸命やったよね?その努力が、全部水の泡ってこと?
もう20年も前の話だが、今でも私は勝ち負けなんて、と思っている。
No.214
まだ続く物語
私と貴方の関係は、まだ続く物語
きれいで楽しくて、甘くて幸せで
でも、貴方は居ない
なんでこんなに突然に?
でも私は幸せの記憶を抱えて
生きていく
まだ続く物語だから
No.213
渡り鳥
アキラってば、渡り鳥みたいにあちこちの女を渡り歩いて、何をしてるの?
でも、私が一番って言ったもんね。だから私は、季節が巡って、またアキラが渡ってくるのを待ってる。
No.212
さらさら
不細工で小さく、何の取り柄もない高校時代の私。
ま、50年経っても、そんなに取り柄はないけどね。
ある日、ご近所の小学生女子をお持ちのお母さんに話しかけられた。顔を見れば挨拶する程度の間柄だったけど…。
「娘がね、めぐみさんの髪がさらさらできれいで、ああいうふうになりたいって言うのよ」
その頃私は、腰まであるロングヘアを垂らして歩いていた。高校では縛っていたが、ぎゅっとしばる感覚がいやだったから。
親は、褒めるところなど1つも無い!と、いつもけちょんけちょんに潰すようなことを言っていたので、自分にほんの少しの自信も無かった私は、お母さんのその言葉を聞いて、ぱぁつと光明が差した。
No.211
これで最後
「考えられる限りの検査をしました。未だに原因不明です。処方できる薬は、これで最後です」
原因不明はキツい。元が分かれば対処法もあるだろうに、抗生物質をいくつも処方されて、どれか当たれば。という状態。
処方出来る薬がもう無いということは、効かなかったら治らない、ということで良いのだろうか?
私は「これで最後」の最初の一錠を、緊張しながら飲み下した。
No.210
君の名前を呼んだ日
大っ嫌いだ!あんな性格の悪いやつは居ない!
僕は、クラスメイトの武彦のことをずっとそう思っていた。高校受験の大事な時期に、付き合っていたら良いことは無い。
僕がクラスで発表すると、必ず難癖をつけてくる。学校の帰りにまとわりついてきて、なんだかんだ言う。着いてくるなとはさすがに言えず、曖昧な返事をして凌いでいた。
とうとう受験がやってきて、僕はどうにか志望校に合格した。難関校で、うちの学校から行くのは、毎年1人か2人だ。学校は、誰がどこに合格したか発表しないし、そもそも、あと何人受かっているのかも、誰もいないのかも分からない。そこからもう不安だった。
入学式の日、当たり前だが、みんな知らない顔で、僕は心細かった。
式が終わって、校庭でぼんやりしていると、遠くに武彦が見えた。僕は思わず、大声で彼を呼んだ。駆け寄って来る武彦をみて、案外悪いやつじゃないのかも、と、単純に思ってしまった。
No.209
やさしい雨音
勝手なもので、自分が外に出ない時の雨はすき。
いつもの、外のいろいろな音をソフトにしてくれる。軒を伝って落ちる雨の音は規則的で美しい。
なんとなくそれを数えていると、無心になれる。やさしい雨音だ。
No.208