シャイロック

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12/2/2024, 1:52:09 AM

距離

 我々は、いま立ち止まっている場所を起点として、一瞬で移動すれば時間を1秒以下だが移動しているのではないかと、ずっと思っている。まぁ、普通は一歩で60〜80センチ程度の距離だが、地球の自転と反対側に移動すれば時間を遡り、同じ方向だと進む。
 だから、7m以上飛んでしまう走り幅跳びの人は、助走も合わせると、かなり時間移動しているのではないのか?
 だったら、新幹線や飛行機だともっとだ。なんだか楽しくならないか?1秒でもそうとうな距離だ。
 「星の王子さま」の中に、王子さまが小さな小さな星に行ったとき、椅子をズラしては日没を、何度も何度も見たというくだりがある。小さな星の自転に合わせて、時間移動した形だと思う。
 さぁ今日から、出来るだけ一歩を大きくして、走るときは全力で走ろう。時間移動のために距離を稼ぐと思うと、楽しいではないか!

12/1/2024, 6:31:00 AM

泣かないで

 れいかちゃんが泣いていたから、ぼくは頭をなでなでして「泣かないで」って言ってあげた。けいこ先生が来て「泣かせたのるいくん?」と言うから「違うよ!」って言った。
 「じゃぁ、なんでれいかちゃん泣いてるの?」「わかんない。泣いてたから頭なでなでしてあげてたの」「そうなのね」
 でも、他の子がいっぱい来て「るいくん、泣かせた、れいかちゃん泣かせた」と騒がれて、今度はぼくが泣いちゃった。 
 そしたらあいちゃんがぼくに「泣かないで」って言ってくれた。れいかちゃんもまだ泣いてるけど、ぼくだってそう簡単に泣くのは止めらんない。止まらないんだね。
 こんどはさおり先生がぼくたちのところに来て、「るいくん、どうして泣いちゃったの?」とあいちゃんに聞いた。あいちゃんは「わかんない」って言いながら、なんだか悲しくなっちゃったのかな、泣いちゃった。しょうがないから、ぼくは涙をスモックの袖でげしげし拭いて、あいちゃんに「泣かないで」って言ってあげた。
 後ろを見たら、みんなで泣いてた。けいこ先生とさおり先生が、みんなに「泣かないで」って言ってたけど、みんな泣いてた。
 これって、パニックって言うんだよね。

11/30/2024, 4:05:23 AM

冬のはじまり

 紫煙が空気に溶け込んだ時、それが冬だと、冷たい空気のせいか、甘い香りに変わる。その一瞬が好きだった。
 普段は、近くで煙草を吸われると、彼氏、友人、他人に関わらずさり気なく逃げるが、それだけは別だった。すれ違う赤の他人でさえ、煙草を吸っていると、通り過ぎた後、少しの間を置いて(ここがポイント)すうっと息を吸い込む。
 その香りが甘くなったら、冬のはじまりを実感する。

 今は、路上喫煙が禁止のところも多く、紫煙の甘さを感じる機会もずいぶん減ったけどね。

11/29/2024, 3:58:53 AM

終わらせないで

 楽しいことは「終わらせないで」と思う。
この楽しさが、いつまでも続いてほしい。でも、「幸せすぎて怖い」のと同じで、いつか終わるのを知っているから切ないのだ。そりゃ、毎日毎日「うぇ〜い!」というわけにはいかないのも分かっている。
 だが、不思議なことに俺は、ルナとの仲は永遠だと思っていた。2人の愛はどちらか死ぬまで続くと・・・俺は馬鹿だ。
 別れてほしいと言われたとき、俺は「ハトが豆鉄砲食らったような顔って、これだ」と頭の何処かで思った。丸く目と口を開いて、事態が飲み込めずフリーズしていた。
 好きな人が出来た?俺以外に?そっちと結婚する?え?え?なに?なんで???
 びっくりしすぎて解凍しない俺を残して、ルナは去って行った。一番「終わらせないで」というか、終わるとは思っていなかったことが終わった。終わったんだ。やっぱり終わりはあるんだ。
 いつの間にか膝が濡れていた。意識していなかったが、俺は泣いているらしい。
 

11/28/2024, 3:39:09 AM

愛情

 愛情があれば、なんでも良いというわけではない。愛してくれているのは分かるが、束縛がキツく、自分の思い通りにしたくて騒ぐし、聞かないとヒステリーを起こす。そういう愛情の表現もあるのだろうけど、ほとほと疲れた。
 いつか、2人で街を歩いていて、知り合いと会った。よっ、元気?程度の挨拶を交わしてすれ違ったのに、妻はキ〜ッとなって、
「あの人誰?」「私に分からないようになんか合図したでしょう?」「あんな笑顔をむけるのね!」「今度会うつもり?浮気?」
 いくらただの知り合いであって、友達ですら
ないよ、と言っても聞かない。
 俺の携帯は見るし、位置情報も共有していて、どこにいたの?何をしたの?と聞かれても、やましいことは何もない。
 君のことを愛していて、こうして一緒に歩いているじゃないか。他の誰とも、手を繋いだりしないよ。
 そう言うと、うん、それは分かってるんだけど、と可愛い唇を尖らせる。今はまだ、愛情からの嫉妬だからと許せるけど、俺もだんだん窮屈になってきた。
 もしも別れるって言ったら、もっと、死ぬの生きるの殺すの殺されるのという騒ぎになるだろうな。

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