#3蝶よ花よ
蝶よ花よと育てられた。
私の蝶は標本。
みんなの模範。展翅板に磔にされた。
私の花は冠。
無邪気なあの子に手折られて。
愛おしい人を飾っている。
蝶よ花よと育てられた。
君の蝶は美しい。
ひらひらと自由に舞っている。
君の花は満開。
笑顔という名の花を咲かせ。
みんなの蕾をそよがせる。
蝶よ花よと育てられず。
あの子の蝶はまだ蛹。
美しい蝶になる日を夢見て。
静かにじっと眠っている。
あの子の花はまだ蕾。
軽々しく見せまいと、今か今かと待っている。
どの蝶も花も、
全て
愛らしい。
#2 最初から決まってた
神が運命を決めるなんて、一体誰が言ったんだろう。
全くひどいものだ。
こちらが全て決めたって、なにも面白くないに決まっているだろう?
我々神も、大抵人間と同じなんだよ。より面白いものを求めていく。あまり難しいことは言っていないつもりなのだけれど。
……え?叶わない恋も、叶わない夢も、初めから決まってる、だって?はは、そんなわけないじゃないか。むしろ、見るたびに楽しませてもらっているよ。君たちが小説や漫画を読むのと同じようにね。だから、叶わないことがあるとしたなら……それは、きっと君にとって、もっと良い人や物事があるということなんじゃないかい?もしくは、その先の幸せのために、上の神々が試練を設けているのかもね。
……まぁ、本当のところはわからないけどさ。僕は神の中でも下っ端だし。でも、変わらない運命だと思うより、どうとでも変えられる、もっと良い事に巡り会える、と思った方が得だと思うけどね。
ま、せいぜい僕らを楽しませてね、人間さん。
#1 【太陽】
ある宇宙に、惑星らと仲良くなりたい、人見知りの真面目な太陽がいた。
太陽はそのために血の滲むような努力をした。
でも、太陽の願いは叶わなかった。
どれだけ宇宙を照らしても、
どれだけ頑張っても、
みんな太陽を敬遠してしまう。
太陽が眩しすぎたから。暑すぎたから。
太陽は悲嘆にくれた。
優しい月が羨ましかった。
惑星たちからの人気者。
太陽はどれだけ頑張っても、月にはなれなかった。
ある時、月が太陽に言った。
「あなたのおかげで、私は惑星のみんなに優しい光を与えられます。本当に、いつもありがとう」
それから、太陽はずっと、その宇宙の惑星たちと、一つの衛星のために、灯りをともし続けている。