あまり

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8/14/2023, 10:13:58 PM

あの夏
みんな は ぼくよりはやく
自転車にのれるようになって
遠ざかるうしろ姿をぼくは走って追いかけた

すこし先の上り坂で競争になって
みんなの背中が坂のむこうへ見えなくなったとき
一瞬 悲しくなってとまった足を
あきらめに似た気持ちで動かした
とにかく進まなければ追いつけはしない
いつだってそうだ
おいていかれることにはあんまりなれていて
待たせるのも嫌だからぼくもそうしてほしかった

坂のてっぺんを越えると
自転車からおりたきみが立っていて
「まってって、なんで言わないの?」って言った
うまく返せないぼくを自転車の後ろにのせて
君はぐんぐん坂をくだった

町なみのむこうに見える海とまっしろな入道雲へ
有名な映画の少年と宇宙人みたいに
飛べるような気がしてドキドキした
言葉にすることすらすぐにはできなくて
でもあのときほんとうは ほんとうに
うれしいと思ったんだ


『自転車に乗って』

8/14/2023, 12:50:53 AM

きゅうに動けなくなってしまうようなときは
目をつむってひだまりをさがす

子供のころに食べた姫リンゴの味
愛犬のやわらかな毛並み
大好きなピアノの音
君の書いた詩

ひだまりでまるくなってあたたまる
生きていると失くしてしまったり
変わってしまったりするようなこと
でもその小さな幸福があたためてくれたところは
いつまでもぬくぬくとして心地よかった


『心の健康』

8/13/2023, 12:35:16 AM

雲間からさすひかりが
ウィンドウチャイムを鳴らすみたいに

早朝の木にあつまる小鳥のおしゃべりや
ソーダをそそいだコップの中の氷や
高くけり上げられたボールのたてる音

君の何気ないしぐさや表情が
私のなかで音を鳴らす

無軌道な音楽を奏でている


『君の奏でる音楽』

8/8/2023, 1:03:59 PM

甘すぎる水は蝶を殺すし
水が多ければ花の根も腐る
惜しみなく与えることが
必ずしも愛ではない

あなたを無力でいさせようとする"善意"
あなたの意思を尊重しない"厚意"
苦しいのは
そそがれたのが毒水だから


『蝶よ花よ』

7/31/2023, 9:33:30 PM

盆には少しはやいけれど夢をみたよ

私って不義理だし飽きっぽいし
けれどあなたのことはまだまだ
特別にしておきたいから


『だから、一人でいたい。』

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