はぐれないようにって
服のすそを掴もうとする君
のびるからやめなよって
宙をさまよう手をとって
りんご飴をふたつ買った
こはく色に光るりんかくの
まっ赤で丸いそれは
大きくて固くて食べづらい
あんのじょう 苦戦している君
でも怒りもせずになんだか楽しそうだ
値段は少し高いけど
可愛いからしかたないね と
口いっぱいに甘さを頬張る夏
『お祭り』
"もうおやすみ
夜はふけた
ベルベットの暗闇が
優しくまぶたをくすぐっても
きみたちはそれをはらおうと
無闇に明かりをふりかざして
子供たち
だだをこねず
もう寝ること"
暗がりから誰かが息を吹いて
ロウソクの灯りがかき消えるように
街の明かりは一斉に消えて
すると今度は
空いちめんに星が
降り落ちんばかりに瞬いて
天上にお住まいの神様たちも
今夜はずいぶん
夜ふかしのようですね
『神様が舞い降りてきて、こう言った。』
ハロー
空が高すぎるこんな日は
不安なんです
風船のように
どこまでも飛んでゆく妄想
水面を見つめるときの
めまいに似ている
おばさんにもらった風船のひも
離してしまってごめんなさい
私がぼんやりしていたばかりに
あっとゆう間にそらに吸い込まれて
よるべなく飛んでいく姿が
ずっと小さくなるまで見えていた
ハロー
きみは月の衛星になって
なんてこともなく きっと
寒すぎる大気に破裂してしまった
そんなことが思い浮かぶ
うっかり落っこちてしまいそうな
青すぎる空
『空を見上げて心に浮かんだこと』
ずっと目をあけたまま夢を見ている
小さな庭のひだまりで
自分のしっぽを追いかけて
バターになりかけてる子犬
ピアノの音が
途切れたり もどったりしながら
ワルツを伴奏している
空に雲が龍の鱗のかたち
錯覚かと思うくらいうすく
虹に色づいて
ゆっくり やわらかく形を変えている
自分のしっぽを齧りながら眠る蛇の
見る夢はどんな夢
目覚めたらはじけて消えるような
シャボン玉の色
『終わりにしよう』
そんなことあるはずもないのに
良くできた人形の瞳が
こちらを追って見えるように
あなたの言葉の切先は
いつもこちらを向いている気がする
どれほどの時間を費やせば
それほど鋭く光るものか
あなたが磨き上げた狂気は
うっとりするほど美しい
あなたの目の中を覗けば
恐ろしいほど凪いで見えた
黒い湖面は
静かに煮え立ち
さらにその奥に
燃えたぎる地獄が見えた
本を閉じて
現実に立ち返るように
まぶたを閉じて
その赤を遮る
しかしてその鮮烈な炎は
シャッターを切られたように
網膜に焼き付いて
私の小さな地獄になった
向日葵の花がいつでも太陽を向くように
いつもあなたを目で追っていたのは
『君の目を見つめると』