あまり

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4/5/2023, 1:37:39 PM

うるんだ星空から
はらはらと幻のような雪がこぼれて
チューリップ畑は
まるごと砂糖づけのようになって
さむいのか あたたかいのか
つないだ君の手のひら
春のすみっこ
陽光のとどかない空で
孤独な魂たちがにぎやかにもえている
そのうたが聞こえてしまった日から
ずいぶん遠くまで来てしまったね
まだまだ遠くへ行かなくてはいけないよ
太陽が昇れば
あたたかくにじんでしまうような星空を
見失わないように 忘れないように
手のひらの暗がりにしまって
いつまでも追いかけていたい
追いかけて行こう


『星空の下で』

4/2/2023, 11:09:36 AM

色づいた君のつめさきに
したたりそうな日だまり
スマホに反射した光が細かくゆれて
猫が眠そうな目でそれを追っている
ゆびさきでなにか大切なものを手繰る君
大切なのに
大切にできないのなら
拾ってはいけないのに
酷く傷つけたり
時に壊してしまっても
さみしいよりは
あたたかいのかい?
きっと所有することだけが幸せではないよ
自分の外へ求めても見つからないものがあるよ
本当に大切なものは
いつかどこかへ
置き忘れてしまったような君のこころ
そういうものだと思うのだけれど


『大切なもの』

4/1/2023, 10:41:27 AM

光のみちた風が吹く
いのこる冬をおいたてるように
古い いくさの神も
剣を農具へもちかえて
四月の嘘は
ユーモアをもって吐かれるべきだ
鉄の匂いはあおく若葉の香
ながいながい悲しみも
花の雨にかわって
閉ざされた門や戸が開き
人々が踊りだす
はじまりの日
生まれかわりのひるまえ


『エイプリルフール』

4/1/2023, 1:42:14 AM

美しいものを君に

窓ぎわのサボテンの
頭にピンクの花冠をのせて
甘やかに色づく東のそらを
星々が列になって旅をしているよ
薄闇に小さな羽音が灯り
ほどけた水のにおいが喉を潤して
目覚めた春をゆきかう人々の
さよならとはじめましてのあいだに
福音のつぼみがたくさんゆれているよ
どうか
幸せになって
この美しい季節のすべてが
君のものだから


『幸せに』

3/30/2023, 9:43:45 PM

君が何気ないふりで抱えて歩く
心にぽっかりあいた穴に
風がとおって鳴る音を
僕はときどき
聞いてしまうことがあるんだ

それはやわらかな土笛の音色
夜を纏う梟のうた
銀河をさまよう汽笛

生まれたばかりの雛鳥の喉のふるえが
小さな蝶のはばたきが
身体の内に巣食う暗闇の
がらんどうをふるわせて
僕の心もふるえている

あちらこちらで風がおこり
孤独な心の共鳴が
音楽のように世界をみたしている
何気ないふりで抱えて歩くものを
知らせている


『何気ないふり』

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