両手一杯の花籠に
君の好きな色のリボンを掛けて
袋一杯にお菓子を
甘いのからおつまみまで
ドリンクは何がいい?
とびきり上手くいれてあげるよ
カモミールのミルクティー
アロマのキャンドル
カラフルなバスボム
宝石みたいな石鹸
そうだ君のお気に入りの作家さんの
新刊はもう買ったのかな
大好きな君に大好きなものをたくさん
たくさん抱えて笑って欲しい
あわよくばその中の
一つになれたら嬉しい
『大好きな君に』
なあんかひなまつりって
急速に気分が落下していくのです
私にとっておひなさまって
この季節デパートや施設に飾られているのを
遠巻きに眺めるくらいのもので
実際ひな人形を飾る家庭ってどのくらいあるのかしら
とはいえ我が家にも昔は
祖母が姉の為に買ったひな人形があったそうで
今より白い壁の前に飾られたひな壇と
ちょっとおすましな姉との写真が残っている
しかし役目を終えた後はさして大切にもされず
どういう訳か私が物心ついたころには
湿気で爆発したざんばら髪の
おひなさまの首だけが
納戸に転がっていた
当時通っていた保育所では
保育士さんたちの真心こもった顔はめパネルで
子供たちはみんなおひなさまさまとおだいりさま
綺麗なピンクの装飾が似合う
可愛い女の子たちが眩しくて羨ましかった
ざんばら髪で死んだ魚の目をしたおひなさま
一緒に写っているこれは誰くんだ?
はれの日の思い出に少しの申し訳なさが
この季節の空気を今も苦くしている
小さな頃はシンデレラをよく見てた
お姫様より魔法使いになりたかった
希望なんて
ひとつあれば上等
闇を抱えた人ほど明るく笑う
灰の中に蘇る不屈の輝きで
夢か幻でもいい
泥の中に咲くものがあると信じる
真夜中に虹を掛けるような
魔法を信じてる
『たったひとつの希望』
一瞬満たされた気持ちになっても
それは永遠にならないので
幸せを注ぐための器は皆
少しずつ欠けているものなんだろう
『欲望』
生まれ育った街
春になるとたんぽぽの綿毛で覆われて
近所の犬や子供達の遊び場だった広い空き地
今は住宅とクリーニング屋で埋まっている
埋められた側溝には昔
雨が降るとあめんぼが飛んできて
不思議なリズムで水面を滑っていた
過去の中にしか存在しない景色は
地球上の何処より遠いと思った
時間が経つほどに
その距離は離れていく
全てのことに変化は訪れて
それは少し寂しいけれど楽しい
始発列車が走り出し
遠ざかる街へさよならと手を振った
『遠くの街へ』