泳げない身としては、海など恐怖のシンボルだ。海の底なんてもってのほか。
光も届かず、水で押し潰された場所に、しかし生きているものがいる。脂で柔らかい身体。自ら生み出す光。進化する器官に退化する器官。
異世界のようなその場所に、遥か上空から思いを馳せる。思いは水圧じゃ潰れないから。
会いたい人なら少なからずいる。
でもこちらから連絡はできない。
「今何してるの?」
「今まで何してたの?」
私は聞きたいけれど、聞かれたくはない。
だから孤独なのだ。
二、三年ほど継続して日記を書いていた時期がある。日記を手元に置き、何度となく開き書いていたことさえある。ほとんど中毒だった。
しかしぱったりとやめてしまって、それきりだ。
理由は何となく察している。
私という存在には何も価値がなく、文字を連ねたところで現実はどうにもならず、ただ妄想と空想に明け暮れるだけの人間未満だ。
書くことで、それが紙の上で浮き彫りになる。私は現実を直視したくなかったのだ。
とはいえ今はこうして書いている。テーマに困ることはあるが、書くこと自体は楽しい。ハートがぽつぽつと増えるのを見ると胸が高鳴る。
こんなものでも見てくれて感謝の限りである。
前の日記は閉じられたままだが、新たに開いた日記もあるということだ。
木枯らしという言葉にはそれほど思い入れがないが、季節外れの言葉では? と調べてみた。
晩秋から初冬に吹く北よりの季節風ということだった。
東京と大阪でも木枯らしになる条件が違うらしい。それは初めて知った。
また太平洋側で吹く乾いた風なので、日本海に住む身にとっては馴染みがないのも納得だ。
無知の知。知らないことを知るのは楽しい。
美しき空。美しき海。青いものって美しい。
揺らめく炎。傾く太陽。赤いものって美しい。
一瞬の雷。一面のひまわり畑。黄色いものって美しい。
心を打つ全てのもの。