こんな世界なんて嫌い。
だって私なんかがいるから。
自分のことは自分でよくわかっている。問題ないはずだったんだ。以前だってそうだった。忘れた訳じゃない、ちょっと頭から抜けてただけ。ほんの少しの慢心だった。
お腹すいてるからって、美味しいおかずだからって、食べすぎたらあとで苦しくなるのは知ってるでしょ。どうしていつもわからなくなるの。
自戒。
悪夢だったり、悪夢とは言わずとも夢見の悪い夢ばかり見る。寝ること自体は好きだが、目覚めは良いに越したことはない。どうにかならないものかと私は考えてみた。
私の悪夢パターンのひとつは、目的地に延々たどり着けないものだ。身体が異常に重かったり、道に迷ったり、ゴールが動いて遠ざかったりする。
そこで私はテレポートを習得してみた。無論、夢の中での能力である。
「頑張っているのに到着しないなあ」と思ったら、ふと唐突にこれが夢だと理解して、瞬間移動できることにして、無理矢理目的地に行ってしまうのだ。
特定の状況下で明晰夢にしてしまうイメージだ。最初から最後まで明晰夢を見ようとするのは難しいが、ごく限定的になら意外とできる。私はできた。
なんともチートじみた対処法だ。実際チートなのだろう。実践してみたところ、夢はそこで停滞してしまって折角の目的地なのに何も起こらなかった。
ゲームでいうところのフラグ立てをすっ飛ばして進んでしまったようなものだ。本来のイベントは起こらず、ほとんどフリーズ状態になった。
つまり延々目的地目指して右往左往行ったり来たりするのが正規ルートだったというわけか。目覚めてからの私はひどく落胆した。このタイプの夢は疲れるのだ。
それからも気づければテレポートを使ってみている。目的地に着いても、フリーズした経験のせいか、どこかバグったような挙動の夢になる。夢のくせにままならない。
こんな対処法なんて不要な、いい夢だけを見られればいいのに。
ずっとこのままでいいはずがない。わかっているけど、動けない。
『チーズはどこへ消えた?』という本を読んだ。まさしく、恐れず変化へ飛び込めといった啓蒙的な内容だった。
変化しないことに比べれば老いてから変化する方がずっと尊い。わかっているのに。この足は動かない。
生の終わりに焦がれて、自ら死を選ぶ勇気もないのだ。
寒さが身にしみる。私が寒さを感じるのは手指からだ。
末端冷え症どころではなく、日常を送っているだけでひどい霜焼けになってしまうのだ。指がパンパンに腫れ、少し気温が緩むとかゆみに襲われる。冬が苦手な理由のひとつだ。
今年は暖冬ということを指で感じる。先月雪が積もった時期は霜焼けになったが、今は春のように治っている。このまま冬が終わってほしいものだが。