謎い物語の語り手

Open App
11/12/2024, 9:44:37 AM

飛べない翼(あとで書く)

11/10/2024, 8:54:48 AM

脳裏


「私とまた、付き合ってください」
優しい声が庭を包んだ。私の許嫁もとい同盟を結んだ王子が、悪女の姉に告げたのだ。

姉は悪女と呼ばれていた。メイドたちをいじめて、愛馬を虐待し、私を陥れ、王子にわがままを働いていた。

王子は堪忍袋の緒が切れ姉に婚約破棄をした。
同盟を結ぶために、代わりに私との婚約が決まった。

私は王子に長年恋煩いをしていた。
この気持ちは隠しておくはずだった。

だから、とても嬉しかったの。嬉しかったのよ。

姉様、あなたがある日、人格が変わったように善人にならなければ。
私には分からぬ、何かを思い出さなければ。

私が生まれたことで黒に染まったらしい姉はよく私に言っていた。
「あんたさえいなければ幸せだったのに。」

憎々しい顔が脳裏をよぎる。

姉様、良かったわね。私から全てを取り返せたわ。
悪行を挽回して、今じゃ王国一の善人なんでしょ?

あは、あはははは。こんなの酷い。私、悪くないじゃない。
「ハッピーエンドだったのよ。あなたさえいなければ」

きっと私、今脳裏に浮かぶ姉様と同じ顔をしているわ。

11/9/2024, 6:46:54 AM

意味がないこと


淡い青の、果てしなく続く空間の中でただ呼吸を繰り返す。私が何なのかも分からぬままに。

時を追いかけていたら、何かが違う壊れた世界にいた。いや、ここではこれが正常なのか。

行く宛もなく彷徨えば、私を見つけた。

ただ無邪気に笑って、友達と歩いている。

そのあどけなさも、幸せそうな笑顔も憎らしい。

あの時壊せなかったなら、今消してしまえばいい。

自分の中で黒い感情だけが疼いている。

次の瞬間、カァカァと声を出して、そんな黒い気持ちを具現化したような色の鳥が飛んでいった。

茜色の空間に変わっていた。

ああ、馬鹿な考え事をしている内に1日が終わってしまう。

私に似た学生はもう下校しているようだ。

思っていたよりもずいぶんと早く大人になるよ。

そうして、時が過ぎて私の世界は、私の人生は壊れて逝くのだから。

そんな世界の中でただ息を吐く。意味がないことを繰り返す。

11/7/2024, 10:31:10 AM

車視点のCM

あなたとわたし、どんな物語がありますか。

11/7/2024, 9:54:18 AM

柔らかい雨


人魚の女神が慈悲の涙を流したら、世界に雨が、人々に幸福が降り注ぐらしい。

そして再び幻の湖に水が沸き上がれば救われる。

ずっと、その言い伝えを信じていた。
いつか荒んで貧しい、この世界が明るくなると。

女神様、いつ私達に慈悲をくださいますか。

私はもう、何度も運命と戦いました。
彼らもずっと、希望を待ち望んでいます。

我ら聖騎士団に、剣を握る腕はもうないのです。

一筋の光が射し込む廃神殿の真ん中で祈る。

壊れた女神像は、もう私達に救いなどないことを示唆しているのかもしれない。

「どうすれば…良かったのでしょうね」

どうしようもなくて、女神像を抱きしめ泣いていた。

長い時間が経った。眠ってしまったのか。

見れば、女神像の目が蒼く光っている。
私の涙が女神像の目に掛かり、こぼれ落ち、泣いているように見えていた。

柔らかい雨が降り注ぎ、神殿は湖のように潤んでいた。

Next