謎い物語の語り手

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10/11/2024, 4:11:04 PM

カーテン


夜になったら、カーテンを掛けなきゃね。

この暗い暗い夜空に。

雲一つない、晴天の夜空に。

え?カーテンはもう閉めただって?

ふふ、家の中のカーテンを掛けたら見られないよ!

ほら!外に出よう!

見てごらん!人間だけじゃない!

空もカーテンを閉めるみたいだ!

面白いだろう?

人間は家の中を見られないようカーテンを閉めるのに、

空は人間に見られるようにカーテンを掛けるんだ。

寒空の下、僕らは暖もとらずに上を見上げる。

息を飲むほど美しい景色を見ながら君は笑う。

「珍しい表現だな。オーロラが空のカーテンだなんて」

「ありきたりだよ」

10/10/2024, 7:05:39 PM

涙の理由

「精霊がにんげんらしいことをするだなんてね」

微笑みを浮かべた貴方の目から、涙が溢れ落ちている。
「どうしたの」
びっくりして理由を聞くと、貴方は静かに答えた。

「今、君といれてすごく幸せなんだ。だからこの瞬間が終わるのが怖くて、悲しくて仕方ないんだ」

なあにそれ、おかしな人。
私はそう言って笑ったけれど、その意味が分かるような気がするの。

ここがおとぎ話の世界なら、私たちハッピーエンドで終われたのかもしれないのにね。

でも、むりよ。
貴方は火で、私は雪だもの。

「愛ってこんなに温かいのね。それとも貴方の熱かしら、ふふ。溶けてしまいそうだわ」

「なんだかおかしな話だね。君が熱を感じていて、僕が…水を溢しているなんて」

「もう泣かないで。次は溶けて水になった私が貴方を消してしまうかもしれないわよ。」

「そうなったら僕ら、一つになって永遠に離れないでいられるかな」

いつの間にか私も、ぽろぽろ涙を流していた。
溶けているのか悲しいのか、その理由は分からなかった。