涙の理由
「精霊がにんげんらしいことをするだなんてね」
微笑みを浮かべた貴方の目から、涙が溢れ落ちている。
「どうしたの」
びっくりして理由を聞くと、貴方は静かに答えた。
「今、君といれてすごく幸せなんだ。だからこの瞬間が終わるのが怖くて、悲しくて仕方ないんだ」
なあにそれ、おかしな人。
私はそう言って笑ったけれど、その意味が分かるような気がするの。
ここがおとぎ話の世界なら、私たちハッピーエンドで終われたのかもしれないのにね。
でも、むりよ。
貴方は火で、私は雪だもの。
「愛ってこんなに温かいのね。それとも貴方の熱かしら、ふふ。溶けてしまいそうだわ」
「なんだかおかしな話だね。君が熱を感じていて、僕が…水を溢しているなんて」
「もう泣かないで。次は溶けて水になった私が貴方を消してしまうかもしれないわよ。」
「そうなったら僕ら、一つになって永遠に離れないでいられるかな」
いつの間にか私も、ぽろぽろ涙を流していた。
溶けているのか悲しいのか、その理由は分からなかった。
10/10/2024, 7:05:39 PM