『まだ続く物語』
童話では、最後は王子様と結ばれてハッピーエンドになることが多い。
でも現実は、結婚してからのほうが人生は長い。
たとえば白雪姫。
悪い魔女がいなくなり、王子様と幸せな日々。
最初は良いかもしれないが、白雪姫はずっと幸せに過ごせるのだろうか。
身も蓋もないかもしれないが、仮死状態で棺にまで入れられた白雪姫にキスをした王子様って…。
冷静に考えるとどうかしてる。周りで7人もの小人たちが泣いているというのに、それをものともせずキス。美しいというだけで。
助かったから良かったものの、常軌を逸しているとしか…。白雪姫はそこに違和感を抱く日は来ないのだろうか。
王子様だって、白雪姫の容姿が美しいというだけで結婚して、生活を共にしていたらこんなはずじゃなかったと思うことがきっとあるはず。
なぜなら白雪姫は、小人たちがドアを開けてはダメだと言っていたのに、窓なら良いだろうとか信じられない言い訳を並べて開けてしまい、しかもどう見ても怪しい老婆からもらったリンゴを食べたという前科を持つ。
白雪姫もどうかしてる。
…あれ、似た者夫婦か?
ハッピーエンドから続く物語。
白雪姫は王子様への違和感に蓋をしたり、王子様も白雪姫の美しくない一面を受け入れたり、尻拭いをしているかもしれない。
その物語の結末はどんなものになるのだろう。
ハッピーエンドになるのだろうか?
ちょっと見てみたい気もする。
『渡り鳥』
この時期の渡り鳥といえば、ツバメ。
ついこの間、ある道の駅で低く飛ぶツバメを見かけたので、もしかしたらと屋根を見上げてみた。
すると案の定、建物の軒先に巣があった。
小さな黄色いくちばしが見えた。
そして、気が付かなかっただけで、足元には看板があった。
“ツバメの巣があります。ヒナが巣立つまで優しく見守ってください。”
行き交う人も、屋根を見上げては一様にみんな笑顔が浮かんでいる。優しい世界。
ツバメが巣を作るのは縁起が良いと言うけれど、確かにちょっと幸せな気持ちになった爽やかな週末。
『さらさら』
小さな手に砂を掴んでは
さらさらと落とす我が子
砂の感触を楽しんで
落ちる砂をじっと見つめてる
面白いんだよね、わかるよ
でもね
もうそれだけで30分以上経つんだよね
集中力すごいね
でもね
もういいんじゃないかなと思うんだ
ブランコとかすべり台とかもあるよ
あぁ聞いてないよね
今はそれが楽しいんだもんね
だよね…
『これで最後』
このTシャツ、だいぶくたびれてきたなぁ。
そろそろ捨て時か。
最後、あと一回着たら捨てよう。
――数日後。
あ、このTシャツ、捨てようと思ってたんだっけ。
洗濯しちゃったな。
せっかく洗ったんだし、もう一回だけ着たら捨てよう。これで最後。
――数日後。
あ、また洗っちゃった…。
『君の名前を呼んだ日』
小学生のとき、まだ子猫の君が我が家に来て、
家族みんなで考えた名前を呼んだ。
「にゃあ」
と返事をした君。とても可愛かった。
今思えばこの時が、
仲良くしたい(構いたい)私と
気ままにしてたい(構われたくない)君の
戦いの始まりだった。
君が天国へ行ってしまって何年も経つけど、
最後まで一方通行だったけど、
大好きだったよ。