『さらさら』
小さな手に砂を掴んでは
さらさらと落とす我が子
砂の感触を楽しんで
落ちる砂をじっと見つめてる
面白いんだよね、わかるよ
でもね
もうそれだけで30分以上経つんだよね
集中力すごいね
でもね
もういいんじゃないかなと思うんだ
ブランコとかすべり台とかもあるよ
あぁ聞いてないよね
今はそれが楽しいんだもんね
だよね…
『これで最後』
このTシャツ、だいぶくたびれてきたなぁ。
そろそろ捨て時か。
最後、あと一回着たら捨てよう。
――数日後。
あ、このTシャツ、捨てようと思ってたんだっけ。
洗濯しちゃったな。
せっかく洗ったんだし、もう一回だけ着たら捨てよう。これで最後。
――数日後。
あ、また洗っちゃった…。
『君の名前を呼んだ日』
小学生のとき、まだ子猫の君が我が家に来て、
家族みんなで考えた名前を呼んだ。
「にゃあ」
と返事をした君。とても可愛かった。
今思えばこの時が、
仲良くしたい(構いたい)私と
気ままにしてたい(構われたくない)君の
戦いの始まりだった。
君が天国へ行ってしまって何年も経つけど、
最後まで一方通行だったけど、
大好きだったよ。
『やさしい雨音』
思ってもみなかった
まさかお前が先にいくなんて
幼い日
いつも僕を追いかけてきていたね
順番は守らないといけないよと
あれだけ教えてきたのだ
きっともっと生きたかったことだろう
よく頑張った
今日は涙雨
雨音だけがやさしく響く
今はただ
安らかに
『歌』
日本語って、歌みたいだね。
英語圏の、とある国に数ヶ月滞在していたとき、通りすがりの若い男の子が爽やかに英語でそう言って過ぎ去っていったことがある。
日本語を知らない人には、そういう風に聞こえるんだ、と新鮮に驚いたし、そんな歌みたいな言語を母国語としていることが単純にちょっと嬉しかった。
話していた内容は英語への弱音と泣き言ばかりだったのだけど。こんなことなら、もう少し前向きな日本語を話していれば良かった。
なんとなくだけど。