―ゴミ山の中にちっちゃくて、きたないけど、
キレイなお人形をみつけました。うれしかったです。
―お人形はすこし、やぶれていて、かわいそうだと
思いました。でも、ワタシは直せません。
こまりました。
―お人形さんのためにお洋服をかってあげたいです。
お金はないので、つくってみようとおもいます。
―お洋服はつくってあげられませんでした。
ワタシのお洋服でがまんしてもらうことにしました。
〜とある少女の日記より〜
少女が死んだ。
天に、神に見放された少女は死んだ。
その少女は小さな人形を持っていた。
最後まで見捨てることなく、ずっと一緒にいたのだ。
孤独な二人に祝福を
二人ぼっちの世界に終止符を――
真っ黒なパレットに、色を落とすの。
たった一つ、丁寧に、優しく。
真っ黒なパレットに意味を与える為に。
独りじゃないよって言ってあげる為に。
ほら、もう真っ黒じゃぁないよ
もう、独りじゃぁないよ
――って言って、欲しかった。
君は、良かったねぇ。
真っ黒な空には、大きな明るい月と
無数に瞬く小さな星が見えた。
それは何処となく、何だか、嬉しそうに見えて、
小さな人形はおなごの為に。
おなごの身代わりとなる為、川に流され
沈み、誰に見守られるでもなく死んでゆく。
誰かの代わりとて、侮るなかれ
人形だとて、無価値と決めつけるなかれ
誰にも見られぬ人形は、自分の無価値を思い、死ぬ
水の中はさぞ冷たかろう
辺りを見れば、己と同じ運命が、
小さな沈みゆく命がみゆる
同じ運命の者が集まるならば、
そこは楽園と成りうるか。
小さな人形は小さく笑った。
君は今、何処にいますか。
ワタシの愛しい人。
ワタシと同じ思想を持つ人。
ワタシを救い、ワタシが救った人。
君は今、川を流れているのでしょうか。
薬を呑んでいるのでしょうか、
腕に、赤い花を咲かせているのでしょうか。
縄で遊んでいるのでしょうか、
風に吹かれているのでしょうか。
いつかまた、遭う事が出来たなら、一緒に楽しく、
旅しましょう。
人生に一度きりの、素敵な旅へ。
きっと、貴方の瞳もそうだった。
あの人の大きな手も、大好きだったその人の音も。
皆、みんな優しかった。
いつか戻ってくるのだと思っていた。
微笑みをうっすら浮かべて、前の様に。
優しく、包み込んでくれるのだと、思っていた。
錯覚していた。
ところが、ところが。
何時まで立っても、あの優しさが戻って来る事はありませんでした。
まぁ、分ってはいたんですよ、でも、でもね。
ほんの少し、一握りの可能性。
信じていなかった訳がなかった。
――嗚呼、空よ。
ワタシ達を見つめ、流れる者よ。
そんな憂いを帯びた様な顔をしないで下さい。
ワタシは貴方と同じ、周りに誰もおらず、愛されざる者
なのです。
貴方の気持ちが痛い程に良く分かります。
貴方の側に居ますから。
貴方は、この貴方と同じ、憂いを顔に浮かべた、愚かな
人間と一緒に居て下さい。
ほんの少し。一時の間で良いのです。
ワタシの側に、居て下さい。