t「手を繋いで」
赤ちゃんの時の手は大人の手の中に収まってしまうほど小さかった。
子どもの時の手は大人より小さいけど成長を感じるほど少し大きくなった。
中学生、高校生の時はもう手を繋ぐような年齢ではなくなった。
大人になった時はその手のぬくもりだけ覚えていた。影が伸びる夕方、手を繋いで一緒に笑って帰った頃が懐かしい。
私が起き上がる事も出来なくなった時、ずっと手を繋いでくれた。幼かった時とかわらないぬくもりと、随分と大きくなった立派な手。
ありがとう、ありがとう。とお互いに感謝を伝えて繋いだ手を離した。おやすみなさい。最後まで握ってくれてありがとう。
t「大好き」
愛してるの方が重いとか、大好きの方が軽いとか
気持ちを込めた誰かの言葉に重い軽いなんてない
人それぞれに愛情表現があってそれは不確かな物
自分は君に愛してる、と言葉を紡いでわたすけど
君から貰う大好きは何者にも代え難い位に嬉しい
言葉に比重はないと思ってるあるのは気持ちだけ
その言葉に込められたじぶんへの思いと君の表情
ただそれが愛おしくてたまらないだからわらって
自分も同じくらい君に伝えるから大好き愛してる
t「叶わぬ夢」
「あのさ何でそんな無茶な目標ばかりたてんの?」
「え?」
「いつも思うんだけどさ、絶対に達成出来ない目標ばっかり立てるよな」
「あぁ...だって簡単に叶う夢なんてつまらないだろ?」
「はぁ?」
「手を伸ばしたら届くような物に憧れないし、そのためにわざわざ動けないだろ?届かない、欲しいって思えるようなわわくわくするような物のほうが燃えるんだよな」
「ふ〜ん。それに付き合わされてるこっちの身にもなって欲しいけどな」
「悪いな!でも叶わぬ夢って言葉にすると叶えてやろう!って燃えない!?」
「...まあ、それはなんとなく」
「だろ!やっぱり持つべきものは親友だな!」
「そうだな...」
t「花の香りと共に」
てふてふてふてふ、黄色い声が華やぐ場所は強かな女性たちのころころした音色が響く。
華やかな声を散々堪能したら、落ち着いた場所へと惹かれるように移動する。そこには無邪気な桃色の声がきゃきゃと遊んでいる。風が吹くとひらひらとピンク色が揺れる。
てふてふてふてふ、囲われたこのハコの中では、どこにいっても花が咲く。風にのって花の香りと共に様々な音色が咲いては散っていく。
t「心のざわめき」
絶対なんて言葉、存在しないんだと思った。
離ればなれになった君からもらった最後の言葉をずっと心の中で抱きしめている。
親の事情で君が迎えにくる、と言った場所から離れなければいけなくなった。名残惜しくも君との思い出がたくさん詰まったこの街とはお別れしなければならない。
君との約束を守る事が出来ないのはとても悲しいけど、もしかしたら君なら、自分がどこにいても見つけてくれるんじゃないかと淡い期待がどこかにあった。
大人になって、故郷から離れてあの頃からたくさんの事が変わった。幼い頃の気持ちは今でも大切な箱の中にしまい込んでいる。君とは当たり前だけど出会えない。
君がどこで何をしているのか、そもそも自分の事を覚えているのかすらわからない。
自分の心をざわめきさせるのは、いつもしまい込んだきみへの気持ちを取り出した時だけだ。