ーーとは、一応幼馴染みになるんだけどね?
ボクとは違って、すごく良い奴なのは君も知ってるでしょう?
優しくて、仲間思いで、絶対に見捨てたりなんかしないって、そんな安心感があるよね~。
……だから、悔しくてしょーがないんだ。
どうして、ボクだったんだろうって。
どうして、君じゃなかったんだろうって、どうにもなんないことを考えちゃうんだよねぇ。
ボクと結ばれちゃった”絆”なんかのせいで、笑うことさえ出来なくなるなんて、思わなかっただろうねぇ。
絆
色々なことが曖昧で、話す度に斜め上の発想に驚かされて。
一体どれが嘘で何が本当なのか解らないくらい、メチャクチャなことを仕出かして。
正直理解しがたい人、なんて印象だった。
……でも、いつだって真っ直ぐで、一生懸命で、全身全霊で全てに挑む姿に魅了されたのも事実で。
ーーーだからさ、たまには褒めてやってもいいんじゃない?
きっと嫌がるかもしれないけど、そんな所に魅せられたんだから、これくらいは受け取ってよね。
たまには
そう言えば、いつからだったんだろうね。
初めて会った時は、正直、仲良くできるのかなって思ったんだ。
ほら、今でこそだけど、その時の君はとてもじゃないけど近寄りがたい雰囲気の塊にしか見えなくて。
何て言うか……孤高? とにかく、こんな自分じゃ近づける気なんてしなかった。
ーーーでも、話してみると結構気さくで、面白くて、本当驚いたなぁ。
後さ、意外に世話好きだよね。何だかんだで面倒も見てくれたし、悪態つきながらもたくさん付き合ってくれたし。
そんなところを知る度に嬉しくなって、ちょっかい出しまくって、気づいたらこうなってて。
みんなにも散々からかわれたけど、君が受け入れてくれたことに一番驚いた。
ーーーだから、さ。君の為に、頑張るよ。
こんな、ダメで、情けなくて、どうしようもない奴だけど。
大好きな君が、もっと好きになってくれるように、ね?
大好きな君に
小さい頃は玩具だと思った。
お人形遊びをしようとして怒られたっけ。
それでも懲りずに小物を持ち出しては遊び回って。
それがいつの間にか、玩具ではなくなって。
大切にもしていない。関心さえなくなって。
見かけないな、くらいにしか思わなくなっていた。
久しぶりに見た雛人形。
祭壇もなくて、ぼんぼりも灯ることはなくて、小物も幾つも欠けた雛人形。
持ち主は相変わらず大切にもしていなくて、関心もなくて。
それでも全員が揃って日の目を見た雛人形が、微かに笑っているように見えたのは、気のせいだったのかもしれない。
ひなまつり
望んだことは、1つだけ。
それがあれば許した、なんて、言えないけど。
でも、本当にそれだけだったんだ。
許して、なんて、何で言うの?
ボクが欲しかった言葉は、そんなんじゃない。
それさえも、望んじゃいけなかったの?
正直に言えば許したくないし、とても許せることじゃない。
けど、落としどころは必要だと解ってもいた。
ーーーだから、許そうと思ったんだ。
……本当はね、解ってたんだ。
許さなきゃいけないんだって、そうしなきゃいけないんだって、ちゃんと解ってたよ?
ーーーだから、許せなかったんだ。
今思えば、それがある意味では希望だったんだろう。
俺達が道を踏み外すか否かの、分岐点だったんだろう。
その希望が打ち砕かれた絶望は、きっと解りはしないだろう。
許さないよ。ボクは絶対に許さない。
”みんな”を奪ったのに、”なかったこと”にしたんだから。
それ以上に、許そうとしたーーをバカにして傷つけたんだから。
望んだことは、たった1つだけだった。
たった1つだけ、どーしても欲しかった。
ーーーただそれだけで、全てが変わっていたかもしれない。
……なんて、もうぜ~んぶ手遅れ、なんだけどね?
たった1つの希望