涙の理由
「どうして泣いてんだ?話くらいなら聞くぜ」
「彼女に振られたんだ」
「そっか...」
「買ったばかりのコーラ...」
「喧嘩なら買うぜ!
涙腺空っぽにしてやるよ!」
「喧嘩じゃなくてコーラ買ってよ」
「よしっ表でよ!なっ!!」
コーヒーが冷めないうちに
「私たち、もう別れよ」
驚きはなかった
日々愛が冷めてゆくのは感じていたから
悲しみはあった
僕の愛は冷めてくれなかったから
話を聞くと他に好きな人ができたとのこと
応援することしかできなかった
弱くて惨めだったから
謝意とか言い訳とか
言いたいことを述べ終わったあと
去っていく彼女の足は軽やかであった
翌朝、目が覚める
隣に彼女はいない
鳥が綺麗なさえずりが随分とはうるさく
美しく澄み切った空は非常にうざったい
悪い夢なんじゃないかと疑いたくもなる現実に
目を覚まそうとコーヒーを淹れる
淹れたのは一杯だけ
ベランダに男が一人
片手には湯気のでているコップが一つ
昨日のこととこれまでのこと
ちょっとの間だけ振り返る
「幸せ...だったな」
冷え切ったコーヒーは苦くて不味かった
恋とコーヒーは冷めないうちに
パラレルワールド
「パラレルワールドは果たして存在するのだろうか
たまたまパラレルワールドの僕がこの世界にやってきたとして、その僕はこの世界において本物と言えるだろうか
パラレルワールド(仮にα世界とおく)が本当に些細な違いしかなく僕においては原子一つ単位でも、人生経験においても齟齬がない僕がこの世界にやってたとしたらその僕と僕は、違う人物と言えるのか
もしだよ、もし仮に、本当に偶然にだが、α世界から僕が来たタイミングでこちらの僕が別の世界に行った場合、α世界から来た僕はこちらに来たことにすら気づかないかもしれない
いや、気付けない
自分の周りには何一つ異変がない
"僕"が"僕"であることに疑問を感じることは起こり得ない
そんな本人も含めた真に誰からも気づかれることのない僕は本物の僕と言えるだろうか」
「どした?パラレルワールドのアニメでもみたの?」
「ん〜、まぁそんなとこかな、君はどう思う?」
「う〜んよくわからないけど僕君は僕君なのかな、でも元々の僕君に会えなくなるのもさみしい気もする、よく分かんないや」
「だよね」
「僕君はどう思うの?例えば私が他の世界の私になったら」
「難しいな、どんな君だとしても惚れる自信はあるのだが、これは浮気にあたるかい?」
「特例で許そうw」
「有難き幸せw」
笑い合う僕らが"僕ら"なのかはどうでもよさそうだ
僕と一緒に
「僕と一緒に」
って君が言うから君の隣にいたのに
君がおいてっちゃだめだろ
私は、君を信じてたのに...
どうして、どうしてなの
待ってよ、君と違って私に余裕はないの
お願い、おいてかないで
「うい、お疲れ〜」
「何がお疲れだ、おいてったくせに」
これだからマラソンは苦手だ
cloudy
If you have never experienced cloudy weather, you will never truly understand why sunny days are so beautiful.
曇りを知らないと晴れの良さを理解できない
どうせ皆、比較で生きてる