コーヒーが冷めないうちに
「私たち、もう別れよ」
驚きはなかった
日々愛が冷めてゆくのは感じていたから
悲しみはあった
僕の愛は冷めてくれなかったから
話を聞くと他に好きな人ができたとのこと
応援することしかできなかった
弱くて惨めだったから
謝意とか言い訳とか
言いたいことを述べ終わったあと
去っていく彼女の足は軽やかであった
翌朝、目が覚める
隣に彼女はいない
鳥が綺麗なさえずりが随分とはうるさく
美しく澄み切った空は非常にうざったい
悪い夢なんじゃないかと疑いたくもなる現実に
目を覚まそうとコーヒーを淹れる
淹れたのは一杯だけ
ベランダに男が一人
片手には湯気のでているコップが一つ
昨日のこととこれまでのこと
ちょっとの間だけ振り返る
「幸せ...だったな」
冷え切ったコーヒーは苦くて不味かった
恋とコーヒーは冷めないうちに
9/27/2025, 7:45:44 AM