恋するひまんちゅ

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7/13/2025, 9:57:34 AM

風鈴の音

【お見舞い】
忘れることのない5月14日
君は何の前触れもなく倒れた
あの教室中のざわめきとそれ以上の己の鼓動のうるささ、以後超えることはないと思える絶望を齢17にして知覚した
君の持病のことは確かに聞いていた
小さい頃から身体が弱く体調を崩しやすいこと、それが今はまだ治すことのできない病による症状であること、いつでも油断できない状況であること
確かに聞いていた
しかし、最近はまるで病なんてないかのように症状も落ち着いていて、元気に運動もできていたから油断していた、心の何処かで治ったんじゃないかって希望も抱いていた
現実は違った
倒れてすぐ教員の呼んだ救急車で君は運ばれた
生徒の僕らはついていくことを許されなかった
気が気でないまま午後を過ごし、帰宅した
病院についてすぐ君は目を覚ましたそうだ
そんな連絡が君の携帯から届いたとき、僕は更に枕を濡らした

しばらくは精密検査で見舞いに行くことも許されなかった

2週間が経った5月28日
ようやく見舞いの許可がでた
事前に知らされていた病院へと向かう
どんな表情をしたらいいのだろう、どんな言葉をかければよいのだろう、何もわからなかったがこの足が止まることはなかった
緊張に押し潰されそうになりながら扉を開けると緊張はすぐになくなった
少し驚いたあとに見せた君のいつも通りな素敵な笑顔はいつも以上に可愛かった
僕も笑いたかったのに安堵からかな、涙を隠せなかったよ
涙のせいかむしろこっちが心配されていた気もしたがお見舞い初日は軽く話して帰ることになった

5月29日
僕はまた見舞いに向かった
今日は涙を隠せた、会話もしっかりできた
容態は大分良いけれどしばらく、少なくとも一学期の間は学校には来れないらしい
悲しいがしょうがない、せめて役に立てないかと思って僕は君のプリント係となった
それからは毎日プリントを届け会話をしてから帰宅するのが日常になった
喜んではいけないのだが、皆は会ってない君に自分だけ会うことに特別感を覚えていた

6月1日
気付いたがこの病院は季節のものを入り口に置いているようだ
昨日まであった鯉のぼりが紫陽花の切り紙とカラフルな長靴に変わっている
そんなことも話して今日もまた帰宅する

6月7日
今日は体育祭だった
彼女が参加できないのが本当に残念だ
結果としては優勝だったが、折角なら君と優勝したかったな
クラスの優勝を喜ばないのはおかしいと思ったので笑顔を作って報告に行ったがバレてしまった
正直に気持ちを言ったら少し怒られた
「競技にはでてないけど私も応援として参加してたんだよ」
一気に自分が恥ずかしくなった
その後すぐ申し訳なさでいっぱいになった
「ごめんね」なんて謝罪を繰り返す
この日はその後の会話に身が入らずいつもより早めに帰宅した

6月8日
自分自身を許しきれないまま、いつもよりなんだか慎重に扉を開けると君はこっちを見ることもなく
「もう怒ってないよ」なんていった
まるで僕のことなんて全てわかっているかのようであった
君には敵わないなと強く思わされた日だった

6月14日
入院から一ヶ月となり改めて精密検査をすることになったためまたしばらく会えなくなるみたいだ
寂しくなるなんて正直に言えたらな

6月28日
随分と待った2週間だった
久しぶりに会う君はまた可愛い笑顔で僕を迎えた
2週間分の話題をたっぷり話してこれまでと同じように帰宅した
君と2人きりになれる
やはり僕はずるいのかもしれないな

7月1日
病院の入り口は風鈴が飾られていた
綺麗な音が気分を涼しくしてくれる
彼女は安静にしていて入り口に行けないんだ
彼女の病室にも置いたらどうだろうなんて考えながら今日も病室に向かう
僕が扉を開いたとき、部屋には彼女の母親が立っていた
「今まで娘のためにありがとう」
涙をこらえるようにして出したと思われるその声は僕を今までにない絶望に叩きつけた
理解したくなかったが君の動かぬ安らかな表情が理解を強制する
静かな病院に似合わない風鈴とこの世の何よりも静かになってしまった君
認めざるを得ない君との別れはあまりにも早すぎた
好きでしたなんて言ったら知ってたよって言われるのかな

風鈴の音の鳴る頃に

7/12/2025, 7:01:24 AM

心だけ、逃避行


いつも君には追いつけなかったな
勉強、運動、人気、そのどれもが君には一歩及ばない
五十歩百歩なんて格言と比べるのもおかしな話だが私は一歩を軽んじることなど到底できなかったし、その一歩は五十歩よりも百歩よりも遠くて仕方がなかった
幼い頃から、友として、ライバルとして見てきたはずの君に、いつの間にやら恋心を抱いていたのかもしれない
思い出すと君とは色々な事をしたね
遊びに行ったり、一緒に勉強したり、学校行事に全力を注いでみたり、どんなときでも勝負事にして競いあってたっけ
そのどれもが私の敗北だったな
あぁ思考がまとまらなくなってきた
もう長くないみたいだ
最期の振り返りをしてみると君がずっと隣にいたよ
一度も君に勝てなかったな
そんな悲しいことを考えるのはやめよう
一度だけこの一度だけは君を追い抜いてしまったな
いつまでも君を待つからさ、君はのんびりでいいよ
騒がしい音の数々ももう聞こえなくなる頃、私は動くことなく君をおいていったようだ

7/11/2025, 9:22:53 AM

冒険


冒険的な恋をした
というよりか恋は全て冒険なのかもしれない

7/10/2025, 5:45:32 AM

届いて.....


そう願うには貴方は遠すぎたのかな
それとも僕が諦めるのが早すぎたのかな

7/9/2025, 4:55:52 AM

あの日の景色


君と見たあの景色を忘れることはないだろう

「忘れたくないし、きっと忘れない」

そんな純粋な思いで笑い合ったあの日、あの日々は本当に幸せだった

君と別れてからしばらくたって、僕にも新しい恋人ができたんだ

正直に言えば君のことを忘れてはいない
本当に君が好きだったから今でもたまに思い出すことがある
もちろん、未練も残っていなければ後悔もない

君といった場所は僕にあの日々を思い出させる
別に今と昔を比べたい訳じゃあない
過去があったから今がある、それだけのことだ

今はもう忘れたほうが楽なのかもしれないが、どうにも忘れられないな

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