―雫―
閉め切った蛇口から水滴が垂れるのを見る。
今、自分が何をしようとしていたか思案する時いつもそうしている。
水滴はぽとぽとと音を鳴らす。一人暮らしの寂しさを知らせるが如く。
1、2分かけそうしていると不意に思い出す。
ああそうか、歯磨きをしようとしていたのだった。
習慣である歯磨きでさえたまに姿を消すのだ。
私だって仕事から逃げても構わんだろう?
だから私が取るべき行動は…
今、何を考えていたのだっけ。
閉め切った蛇口はただそこにある。
明日は仕事だから歯磨きしたらすぐ寝なくては。
定住民はつらいな。
ふと冷たい何かが頬を伝った。
行方を探ると、頭が濡れていた。
やべぇ!髪拭いてねえ!
―神様へ―
引き籠ってないで働け。
―遠くの空へ―
毎日吸っている何か
生意気に燻っている私が
鼻息荒くして戦慄いた
将来に対する懊悩
どうしようよりまずは行動
貴女からすれば単なる妄想
絡まった雑念と論争
ただ追い付きたいだけ本当の私の慾望
普通の人達とは違う歩調
いつの間にか闇の奥底
堅牢さたるや脆弱な六角アコーディオン並の軍船で結局今日も
抱いた大志 心からデリートして生き続けるだろうよ
何を吸ってるかなんて分からないが
その瞬間だけ宇宙と繋がって泣いた
同情も賞状も要らないから
何か吸わせてくれないか?
ー言葉にできないー
今年の4月1日から社会人として働き、覚える事が多い中趣味の読書をしている。だが働く前と後では趣味に対する熱意に開きがあった。読書家と言える程本を読んだ事は無いし、人生観を揺るがすほど私に影響を与えた本にも出逢っていない。それでも本に対する執着は凄まじく、一度本屋に行けば最低でも三時間は離れられない。きっとただ暇だったのだろう。趣味と呼ぶからには生活世界の根元まで絡みつく己を構成する一部でなければならないのに、たった1週間と少しの間に自分だと呼べるものが須臾に消え去った。
いや違うね。最初から趣味じゃなかったのさ。読める環境にありながら読まない選択をしているのは、本は買うのに積んでしまうのは、読書じゃなくて本のコレクションが趣味だからさ。購入それ自体が欲望だったから依然私は私のまま。だからそのままでいい。
いい訳が無いよなあ。常々こんな自分を変えたいとか思ってるけど、思ってるだけなんだよな。
一体どーしたらいいのかね。
言葉に出来ねえ…というか言葉が出ねえ…
春は沈黙し、夏への扉は閉ざされた。10月はたそがれの国。闇の左手でさらに奥へ。国境の長いトンネルを抜けると雪国であった
ウィルソンの霧箱で放射線がみえる様に、吐いた息の行方を伺える。すぐに息は霧散した。五十の星と一つの丸い日が空にある。永遠に輝けることを願って、
私は祈祷した。やがて千羽の鶴が空へ羽ばたいた。