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12/21/2023, 12:56:17 AM

ベルの音が鳴り、来客を告げる。のろのろと箒を動かしていた黒髪の女は「いらっしゃいませぇ」と気怠げに声を上げた。
「すいませーん、店長は今に留守にしてるんすよ。すぐ戻ってくるとは思いますけど」
「あー、じゃあ水だけくれ」
「はぁい」

11/26/2023, 7:28:36 PM

気だるくて、喉が痛い。風邪の引き始めはいつもそうだ。体温計を見下ろして、ため息をつく。今日も37.2未満。平熱ではないけど、即決で休むほどではない。37.2で出勤不可のルールすら、今はないのだから余計に。昨日は人が少ない日だから薬だけ飲んで出勤したけれど、今日はどうしようか。悩みながらも、無意識に朝の支度を済ませていた。

11/26/2023, 7:02:34 AM

 青い空。白い雲。目を刺す強い光。王妃が楽しそうに語り、弟が憧れた景色を、フロネは感慨なく眺めた。煙草を咥え、火をつける。白い煙を吐きながら、(つまんない女だな、あたし)と今更のように思った。
 王妃の語る地上の話が好きだった。弟のように「いつか絶対に見る!」なんて気持ちはなかったが、弟と見れたら楽しいだろうと思っていた。もう少し大きくなって、身体が丈夫になったら。連れて行ってやるつもりだった。
 結局、弟はろくに見れずに死んだ。王妃は人間に殺されたのだと、人伝に聞いた。自分はただ、楽しそうに話す王妃が好きで、それを嬉しそうに聞く弟が好きで、ただそれだけだったのだと、太陽の下で思い知る。
 船縁にもたれ、ひとり煙草をくゆらした。