青い空。白い雲。目を刺す強い光。王妃が楽しそうに語り、弟が憧れた景色を、フロネは感慨なく眺めた。煙草を咥え、火をつける。白い煙を吐きながら、(つまんない女だな、あたし)と今更のように思った。
王妃の語る地上の話が好きだった。弟のように「いつか絶対に見る!」なんて気持ちはなかったが、弟と見れたら楽しいだろうと思っていた。もう少し大きくなって、身体が丈夫になったら。連れて行ってやるつもりだった。
結局、弟はろくに見れずに死んだ。王妃は人間に殺されたのだと、人伝に聞いた。自分はただ、楽しそうに話す王妃が好きで、それを嬉しそうに聞く弟が好きで、ただそれだけだったのだと、太陽の下で思い知る。
船縁にもたれ、ひとり煙草をくゆらした。
11/26/2023, 7:02:34 AM