『二人だけの。』
肩があたった 肘が触れた
指さきをワザと あてにいった
そんな駆け引き 夏の歩道
汗だくの顔が まぶしかった
恋は秘密を 重ねていった
自我を出しぶつけ 分かりあった
それが未来へ 続くと信じ
油断していたの⋯ 衝撃だった
「二人だけの。」
強化ガラスが 木っ端みじん
その画面だけで ピン!と来たの
別れてあげる 別れましょう
あなたって人を 知ったからには
夏がまだいる 日射し強く
指さきを撫でる 風だけが⋯秋
『夏』
瞬間冷凍
飛び散る飛沫(しぶき)
まばゆい日射し
あなたの視線
凍った世界
氷の物体
流れる汗が
ただ、生きている
夏の魔物が
両手をひろげて
恋するように
魔法をかける
それが暗黒の
悲しみであっても
ボクは全力
あなたを愛したい‼️
氷の彫刻
氷中の薔薇
出会いの真夏は
真逆の衝撃
狂った性格
イカれた容姿
きらいになりたい
理由にならない
夏の魔物が
その口をひろげて
考えるなと
呑み込んでゆく
それが絶望の
はじまりであっても
ボクはあなたを
守って抱きしめる
それが漆黒の
淋しさであっても
ボクは永遠に
あなたを愛すだろう
『隠された真実』
実の子であったって
相性はあるんだよ
好きな子と苦手な子
墓場まで隠すけど
だからって嫌いとか
愛がないわけじゃない
血縁の難しさ
距離感を間違える
似てるんだ仕草まで
食べ物の好みまで
身を責める厳しさで
キズつけていたんだな
棄てなさい怨みなさい
一人きり死んでゆく
幸せを願うから
突き放す愛もある
『風鈴の音』
祖母が縁側に吊り下げた
風鈴の音が好きだった
どうして飾るか聞いたなら
涼しくなるため、そう言った
「ちっとも涼しくならないよ」
祖母は笑って「うん」と言う
この世は理屈じゃ回らない
そういう景色が見えてくる
チリチリチリンと鈴が鳴る
心の熱気が冷やされる
「痛いの痛いの飛んでゆけ」
それでも治ったひざの傷
今年も窓辺に吊り下げた
風鈴の音が気持ちいい
チリチリチリンと笑い声
ビールをごくり⋯で祖母に言う
「ちっとも涼しくならないよ」
遺影はやっぱり笑ってる
『心だけ、逃避行』
肉体を縛られて
心だけ逃避行
汚れても生きている
浅ましく悲しいね
壊れてく精神に
ゆるしなど似合わない
睡魔さえ刺してくる
ぷくぷくと血が噴いた
痛みさえ振り切れば
鈍感に救われる
頑張ったまた今日も
ご褒美は泣く時間
死んだなら終わるのか
その問いも縛られる
心だけ逃避行
空中を漂って
やさしさは気持ちいい
だからこそ堕落する
未来さえ拷問だ
起きろって、うるさいよ