『君と見た景色』
ツタの絡まる球場に
電車で行くのは遠かった
古い鉄さびとコンクリート
地方訛りの観客たち
次の試合の選手だろうか
大きな体に後ずさる
いちばん安いチケットを買い
高校野球を初めて観た
ラヂオを聴いてる人もいた
遠くて選手は米粒だ
座る席へと大飛球が来て
その日一番興奮した
あれから何年立ったのだろう
選手は今では名球会
記録も記憶も塗り替えられて
それでも君と見た景色
数年振りかに甲子園
センバツ行こうと思ってる
大谷さんしか知らぬ孫を連れ
あの日の君と見た景色
『手を繋いで』
言葉を使わず 瞳で伝える
数年ぶりの 再会だ
そしてハグして 無理に笑って
お寺の中へ 入ってく
足が痺れて 正座を崩す
お経に飽きた 子供が走る
すこしフラつき 焼香をして
棺(ひつぎ)を覗く 涙する
ままごとしたり 鬼ごっこして
喧嘩もしたけど 好きだった
いつも日暮れに 歌って帰った
手を繋いで 時めいて
あれが初恋 だったと思う
淡くてしょっぱい タイムカプセル
胸で手を組む 冷たい指と
手を繋いで 「ばか」と言う
『どこ?』
ボクはどこ? ここはどこ?
きみはどこ? どこにいるの?
スマホはどこ? 財布はどこ?
キーはどこ? どこにあるの?
恋もない 夢もない
今もない どこにもない
優しさはどこ? 温もりはどこ?
幸せはどこ? どこってなに?
好きってどこ? 嫌いってどこ?
憎むってどこ? どこのことなの?
どこがどこで どこがどこでも
ボクのどこは きみであふれている
どこもかしこも きみがいなけりゃ
ボクのどこは 存在しない
そのぐらい 好きなんだ
そのぐらい すべて、だったんだ…
どこまでも どこだって
何もない きみを、失えば…
『大好き』
「大好き!」って言いたい
いくつになっても
「大好き!」って言いたい
どきどき、恥ずかしい
子供つていいよな
大人は辛いよ
子供っていいよな
いいわけ、できないよ…
大好きって感情が
責任になってくる
大好きって感情が
簡単に、言えなくて…
大好きなんだ、きみのこと
無邪気に言いたいよ
大好きなんだ、きみのこと
そこから、考えたい
大好き! デートをしよう
ジェットコースターは苦手だけれど
大好き! キスしてみよう
いつでも、きみのそばがいい
死ぬ時まで、きみのそばがいい、なぁ~
『叶わぬ夢』
引きっぱなしの布団の上
小さな部屋のすきま風
右手を伸ばして空気をつかむ
風呂に入るか?⋯三日ぶり
薄いカーテン開けても暗く
車や工事や人の声
お米は高くてとっくに買えず
お水でお腹を満たしてる
贅沢なんだろうか?
僕の夢見る生活は
どうすりゃいいんだろうか?
税金だけは振り込んだ
叶わぬ夢なんだろうか?
何の才能も無いけれど
このまま老けるんだろうか?
努力が足らないと
思い泣く
夜は遅くにスーパーに行き
半額シールを探してる
それが唯一、楽しみなんだ
レジは自動で会話無し
贅沢なんだろうか?
半額弁当食べること
どうすりゃいいんだろうか?
暗い夜道はまだ寒い
叶わぬ夢なんだろうか?
まるでゴキブリ以下だけど
それでも夢見ちゃダメかな?
努力が実るって
思う未来