蝶よ花よと育てられ、私は家を出た。
いわば私の両親は過保護だったのかも知れない。一人っ子だったとは言えど
あまり友達とも遊べず、
この間までご飯も炊けなかったのだ。
両親はひたすらに愛をくれるだけであった。
一度触れれば
飲み込まれてしまうような、
気持ちの悪い愛情なんていらない。
私は転んでも見守ってくれる親が良かった。
両親は早速お付き合いしている人はいないのかとメールをしてくる。
悪いが男に愛を与えることが
怖くなってしまった私が
結婚なんてするはずがないだろう。
むしろそれで良い気がする。
それが唯一の反抗である。
両親に感謝を伝えることは
言葉の花束を贈っているようなものです。
最初から決まっていたんだ。
僕ではないって。
それでも、それでも、少しだけ、
期待してしまっただけ。
放課後の校庭。
そういえば
憎たらしい夕日が嫌いであったことを
忘れていた。
高校三年の夏。
僕は顔を濡らした。
淡い期待を抱いてしまうということは
もう少し努力できたということです
つまらないことでも、
やりきらなければなりません。
「どうして?」
渡された課題は期限を守って
こなさなければなりません。
「どうして?」
休まず来なくては行けません。
「どうして?」
つまらないことはやりたくないし、
課題なんて
好きな時にこなした方が上手く行くし、
辛いと感じても行かなければならないの?
貴方の当たり前は立派なものです。
目が覚める前に、此処から出なくちゃ。
コンクリートで囲まれた廊下を必死に走る。
早く、早く、
もっと前に、
追っ手が来る。
それまでに出ないと
起きれない気がしてならないのだ。
早く、早く、
走れ、もっと、
追い付かれる。
見えた、扉だ。
閉まってしまう前に、行かなくては。
駆けろ、二度と起きれなくなる……。
夢に取り残されないように、
明日も無事に戻ってきてくださいね。
明日、もし晴れたら
電車で遠くへ行こう。
山を登って滝を見よう。
きっと自然を感じられる。
浜辺を走って海に入ろう。
きっと自然に笑えるから。
「明日、もし晴れなかったら?」
私はそう言った。
すると彼は
「其処から飛んだら良いさ」
とまるで他人事のように笑った。
人生は大半が賭けである。
そう思いませんか?