拝啓、僕の彼女様へ
もう、終わりにしよう。
君は何時もキラキラしていて、
僕の憧れの人だった。
人生の中で一番勇気を出して話し掛けたあの日。
貴女のキラキラが
僕にも移った気がして嬉しくなった。
君の視界に写れただけで十分だったのに、
人間は欲張ってしまうのだなと思う。
告白をふたつ返事で返してくれたのは
驚いたけど嬉しかった。ありがとう。
貴女との日々はすべてがキラキラしていて、
僕には少し眩しかったみたいです。
だから、もうおしまい。
病気の僕が死んだことは忘れて、
もっと素敵な人と出会ってください。
貴女が僕のことを忘れられますように。
僕より
「あーちゃん!手!」
「も~!早いって!しゅうくん。」
隣に住んでいるしゅうくんは私と仲が良いんだ。
幼なじみって言うんだってママが言ってた。
これからもずっと一緒にいられたら
楽しいだろうなぁ~。
「あーちゃん!聞いてる?」
「う、うん!」
私は手を握り返した。
「婆さ……、あーちゃん。お手をどうぞ。」
「あらあら、ふふ。ありがとうねぇ。
しゅうくん。」
そんな呼び名で呼んでいたこともあったねぇ。
もうお互いに歳もとって少し照れ臭いけど……、ずっと楽しませてもらったよ。
お爺さん。
「婆さんは考え事が好きだねぇ。」
「ふふ、お爺さんのことを考えていたのよ。」
私は手を握り返した。
私は子供の頃からこの掌が好きだった。
「あ~!ムカつく!!なんでアイツなの!!」
今日も独り、部屋で吐き捨てるのは
一つ上の兄の悪口。
絶対に僕の方が勉強出来るのに!!
ムカつくムカつくムカつく!!
「まただ。」
2階からドンドコと物に当たっている音がする。
元凶は一つ下の弟だろう。
何か言われたのだろうか。
そういえばテストの結果が貼り出されている頃、つまりはそう言うことであろう。
「兄弟で切磋琢磨出来るって素敵だよね。」
思わず笑みが溢れる。
「ぜ~ったいに、
負けて上げないんだから、あはは!
さいっこう……。」
体が震えた。
優越感に浸るより、
劣等感を持っていた方が成長出来る。
そう、信じています。
これまでずっと我慢してきた。
ずっと笑っていて欲しくて
何処かの誰かのように道化を演じてきたの。
貴女は私みたいにピエロになったけど
熊に襲われちゃったのは可哀想ね。
周りの大人は私を指差して泣いていたわ。
どうしてかしら、
貴女が私にピエロになってみたいって
言ったんじゃないの。
私は悪くないわ、
ただ貴女がピエロになって
笑ってくれるならと思ったの。本心よ。
でも、
動物たちは私と違うことを思ったみたい。
ほら、よく言うじゃない?
動物は本心を見抜くって。
私、貴女の人を嘲笑う為の高笑い
大嫌いよ。
LINEの通知音が鳴る。
今日はずっと片想いしていた相手と
放課後に遊ぶ予定をしているのだ。
姉ちゃんに色々聞いたけど
結局なにもしない方が良い!で話が終わった。
早くLINEを返したいなぁと
机に立てた肘に顎を乗せれば先生と目があった。
あれ、今って授業中……?
拝啓未来の彼女様、
今日の予定は少し遅くなりそうです。
待たせるなんて、ダサいけど
必ず埋め合わせはします。
ごめんなさい!