ふとした瞬間に、月はある。
どんな季節でも、どんな年でも、どんな場所にも。
例え雲に隠れていようと、空の上には月がある。
太陽ほど眩しくは無い。
太陽ほど強く周りを照らしてくれる訳でも無い。
それでも
夜になったら、月はある。
小さい頃からずっと。
月明かりは、変わらず夜を照らしてくれている。
変わる世界の夜を、小さく照らしてくれている。
おやすみなさい、お月様。
自分は昔から卑屈だ。
色んな言葉に対して疑問を抱き、いちいち要らない考察を挟んでしまう。
『小さい命』。
命の大きさってなんだろう。
身体が小さいなら命は小さいのだろうか。
大きい身体だと命は大きいのだろうか。
いや、そんなはずは無い。
違うように見えて、実のところそんなに大差は無いのかもしれない。
どれだけ形が違っても、どれだけ生きる場所が違っても。
命に大小などなく、その大きさは等しいものだと思っている。
結局の所、命に大小など無い。
ライオンも、アリも、人間も、クジラも等しく同じ命を宿している。
胸を張って生きよう。
汗の匂いに染まったコートで、顎に伝う汗を拭う。
朝まではまだ洗剤の香りのしたユニフォームも、今じゃ汗で湿ってしまっている。
とっくに足は震え、腕は赤くなっている。
インターハイ、地区大会決勝。
俺は身長が低めだから、カッコよくスパイクなんて打てない。
だからこの2年。俺はレシーブだけやってきた。
俯いていた顔を上げて前を見る。ネットの向かい側には疲れた顔をした6人の高校生。
長い試合も、あと少しだ。
この点を落とせば俺達は終わる。だが、点をとっても同じ点数になるだけだ。正直うんざりする。
サーブ、球が上がり相手が攻撃の体制をとる。思考をやめ俺は球の行方と相手の動きを捉えている。
相手のスパイカーが飛ぶ。ブロックがそれを防ごうとするが…
不運にも…いや、幸運かもしれない。
それはブロックの手にあたり球が後方に高く上がる。
レシーブの体制をとっていた俺は反応が遅れる。無我夢中で追うが間に合うか微妙だ。
球が落ちていく。前のめりに倒れながら、腕を伸ばす。
勝利とか、試合とか、そんなこと考えてる暇はない。
ただそれを願って、俺は腕を伸ばした。
時々、無性にイラついて、物にあたることがある。
そんな時大体自分が大っ嫌いになる。
酷い言葉を自分に投げかけたり、自分の頬を叩いたり…
酷い時は、いなくなれなんて思ってしまう。
そして、そんな自分をますます嫌いになってしまう。
本当は、そんなの嫌なのにさ。
いなくなりたくなんてないし、自分を好きになっていたいんだ。
周りのどんな友達よりも、結局最後は自分優先なのにさ。
だから、少しずつでいい…
自分を好きに思える努力をすることが大切だと思う。
スマホと財布、小さなデジカメをバックに入れて、バイクに乗る。行き先は決めず、とりあえず知らない道を走って、走って。
お昼くらいになったら、美味しそうなお店に入ってご飯を食べる。街の名前をメモ帳に書いたら、少し街をバイクで回る。
美味しそうなお店の名前、綺麗な場所の写真、小さなカフェの店長とのツーショット。
陽が傾いてきたら、最後に高い場所で街をじっくり眺めて夕陽に染まった街を写真に収める。
帰ったら、今日会った人、入った店、見た景色を日記に記す。
書き終わったら、お土産に持ってきていたケーキを袋から取り出し、ココアと一緒に食べる。
そうしてケーキを食べながら、書いた日記を読み返す。