限界学生

Open App

汗の匂いに染まったコートで、顎に伝う汗を拭う。
朝まではまだ洗剤の香りのしたユニフォームも、今じゃ汗で湿ってしまっている。
とっくに足は震え、腕は赤くなっている。

インターハイ、地区大会決勝。
俺は身長が低めだから、カッコよくスパイクなんて打てない。
だからこの2年。俺はレシーブだけやってきた。

俯いていた顔を上げて前を見る。ネットの向かい側には疲れた顔をした6人の高校生。
長い試合も、あと少しだ。
この点を落とせば俺達は終わる。だが、点をとっても同じ点数になるだけだ。正直うんざりする。

サーブ、球が上がり相手が攻撃の体制をとる。思考をやめ俺は球の行方と相手の動きを捉えている。
相手のスパイカーが飛ぶ。ブロックがそれを防ごうとするが…

不運にも…いや、幸運かもしれない。
それはブロックの手にあたり球が後方に高く上がる。
レシーブの体制をとっていた俺は反応が遅れる。無我夢中で追うが間に合うか微妙だ。
球が落ちていく。前のめりに倒れながら、腕を伸ばす。
勝利とか、試合とか、そんなこと考えてる暇はない。
ただそれを願って、俺は腕を伸ばした。

7/10/2025, 8:24:38 AM