芝草

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3/24/2025, 12:00:33 PM

『もう二度と』

「もう二度と」なんて言葉は
私は信じないことにしているの。

だって、未来は誰にも分からないもの。
また、キミが約束を破ることもあるかもしれないし。
次は、私の番でもおかしくないわ。

何が起きても不思議じゃないと思うのよ。

不確かな未来の約束よりも、
君と一緒に居たいという、今の私の正直な気持ちを、
私は選ぶことにしたの。

3/23/2025, 12:30:57 PM

『曇り』


「おはよう」と
見上げた先にあったのは
お空を覆う、灰色の雲。

この雲のむこうは、何があるの?

きっと、広いお空を明るく照らせる
まぶしい太陽が隠れているのよ。

もしも、風が吹いたなら、
雲を飛ばせてくれるかしら。


「おはよう」と
声をかけた先にあったのは、
うつむき加減の、キミの顔。

この曇った表情のむこうには、何があるの?

きっと、周囲の人を照らせるような、
やさしい笑顔が隠れているのよ。

もしも、私が風になれたなら、
キミの雲を飛ばせてしまえるかしら。

3/22/2025, 1:40:57 PM

『bye bye…』


「なんか、顔みたいに見えない?」

英語の授業の後だった。

たまたま今日、日直になった僕とあの子が
英単語で埋め尽くされた黒板を
粉まみれになりながら消していた時。

あの子が不意にそう言った。

「え?」

話が読めずに聞き返す僕に、
あの子はヘラっと笑いながら、消し忘れていたその英単語を指差した。

「ほら、このbとeの丸っこいところが目で、yが鼻でさ。正面に向いた顔が二つ並んでるみたいじゃない?」

「……あ、あぁ、言われてみれば、何となく?」

「でしょ?」
そう言ってあの子は笑う。

その時、隣のクラスのアイツからあの子は呼ばれて
「ちょっとごめん、行ってくるね」
と、言い残して行ってしまった。

いいな。
粉まみれになったあの子の髪を撫でるアイツと
はにかむようにほほ笑むあの子の顔を見ながら、
僕は思う。

いいな。
byeとbyeは、お互いの隣にいるんだもんな。

そう思ったら、奇妙な顔に似ている英単語ですら
何だかひどく、うらやましく思えてしまった。


3/21/2025, 12:11:34 PM

『君と見た景色』


スマホには、確かに残っているのです。

耀く海や、
鮮やかな花園。

きらめく夜景に、
風情のある街並み。

君と歩いた、数えきれない景色の写真が。

だけど、ボクの記憶の景色は
全部ぼやけているのです。

君の笑顔を見ているだけで、
僕はもう満足なんだから。

3/20/2025, 11:20:22 AM

『手を繋いで』


ただ、それだけで痛みが和らいだ。
「大丈夫よ」って苦笑いする母さんと行った
小児科の予防注射。

ただ、それだけで勇気が湧いた。
寝ぼけ眼で文句を言ってた兄ちゃんと歩いた
夜中のトイレへの廊下。

ただ、それだけで幸せになれた。
「やっと繋いでくれたのね」って、
はにかんだキミと歩く
初デートの帰り道。

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