お祭り
弱くでも、強い色の光をもつそれは、
提灯でした。
7月28日の今日、私は生まれました。
1つの生命が始まると共に光が灯った。
真夏と呼ばれるこの時期は、各地域でお祭りが開かれ、町はいっそう盛り上がっていた。
私はお祭りが好きではないので、毎年家に留まる。
子供や若い者の楽しむ声は、私の耳を痛める。
太鼓が鳴り響き、下駄の音がカランコロンと鳴る。
私の誕生日は、私が主役なんです。
そんなに目立たれると誰も私に気付かない。
友人も少なくはないけれど、皆、それぞれの物語がある。
花火と共に人々の歓声が上がる。
花火だけが私を祝う。
静かに鳴る私は、花火に手を伸ばしました。
来年はお祭りに行ってみましょうか。
#14
追記、誕生日おめでとう。自分。
今一番欲しいもの
あれが欲しい、これが欲しい。
欲求を態度で示せば何だって手に入りました。
猫のように人を惹きつける目、手を入れれば透き通ってしまうような肌、見れば触れたくなってしまう唇。
そんな貴方に見惚れ、貴方が欲しかった。
でも、私には手に入れることが出来ない。
貴方の欲求を満たしても貴方はすぐ他の猫の元に上品に尻尾を伸ばし歩いて行ってしまう。
そして、リブレ オーデパルファムの香水を振りまいている猫に取り入ってしまう。
ですが、私にはその香水は似合いません。
ミスディオール ブルーミング ブーケが似合う私には似合わないのです。
貴方に似合う猫は、私ではないのですか。
私は、純粋な愛が欲しいのです。
けれど、貴方が欲しているものは、ずっと尻尾を振り求愛を求める自分に相手をしてくれる猫なんですね。
貴方が今一番欲しいものは。
#13
私だけ
私だけがいいの。
サファイアの表面がぎらりと光る。
それの周りにはヒトツバタゴを形どって硝子で作られたアーチがかかる。
私だけがいいの。
それを纏うのは私だけがいいの。
それが似合うのは私だけがいいの。
私だけ。
私だけがいいの。
美しいそれを身にまとって快楽にしたるのは、私だけがいいの。
水面に指を少しだけ触れさせるのも私だけがいいの。
美しさを独占して噛み締めてみて。
誰にもこの気持ちをあげたくないはずなの。
私だけがいいの。
私だけ。
#12
子供の頃は
全て、自分が描いた理想的な人生だった。
幼い頃から、自分は周りと少し違かった。
歯車が合わなかった。
白くて、真っ白で、静かなキャンバスに描いた理想的な僕の人生図は、黒かった。
よく、夢がないと両親には言われていた。
子供の頃は理想的な人生を描いていただけだった。
でも、今は違う。
理想的な人生は叶うわけがない。
そう分かっていても、描いてしまう。
止められないんだ。
子供の頃と違って、結末が分かっていても、理想的な人生図をまだ求め続けてしまう。
子供の頃から変わらないな。僕は。
#11
落下
ああ、どこまでも落ちていく。
このまま落ちて終わってしまうのだろうか。
それとも、ずっと永遠に落ち続けるのだろうか。
空はずっと続いて、私からまとわりつくのをやめてくれないのだろうか。
手で触れようとしても、落ちてるので掴めない。
そもそも物なんてない。
ああ、まだ落ち続ける。
私が落ち終われば白い花が赤く彩やかに光るだろう。
ああ、先が見えない。
まだ落ち続ける。
いつ落ち終わるのだろうか。
一瞬で終わってしまいたい。
#10