「恋か、愛か、それとも」
貴方が消えたこの世界に残ったものは
貴方への恋心?貴方への愛?
それとも私を置いていった事への不満?
愛していたわ。
結婚。...してないけど。
恋人。...でもないけど。
貴方への恋心は本物だった。
だから貴方が誰も自分を愛してくれないんだって
笑って泣いて、痛々しい貴方を見るのは辛くて
辛くて胸が傷んだ。
あの時私が貴方を愛しているって言えていたら
貴方が空を舞う事はなかったのかもしれないわね。
まだ私達は子供なの。
足りないもの。足りない知識。
そんなのなんにも分からなくって。
貴方が舞ってから気付くなんてね。
酷い話だわ。
貴方が空を舞った日私、貴方を初めて綺麗だって想ったの。
失礼だとは思うけど、綺麗だった。
辛いことも嫌なこともやりたかったことも夢も全て
捨てて最後に全力で笑っていたの。
でも不思議といつもの大きな体が小さく丸まって
見えたのよ。
ごめんね。
ごめんなさい。
愛しているって、大好きだって。
私は貴方を抱き締めていたいって、この世に留めておきたいって。
言ったらよかった。
まだまだ行かないで欲しかった。
私を置いて逝かないで欲しかった。
そんな不満。
後悔。自己嫌悪。そんなものはとっくに消えた。
今でも残っているのは、私を置いていった事への不満
恋か愛かそれとも不満か。
こんな不満はいつかは忘れてしまいたい。
大っ嫌いな記憶は消してしまいたい。
...でもいつかは消えてしまうのでしょう?
だったら未来は、いつかは。
大切な記憶として消えていって欲しい。
そうなるように、願っている。
そのように祈っている。
「恋か、愛か、それとも」
「君の名前を呼んだ日」
「晴仁」
優しく握った手。
私の指をそっと握ってくれた手。
ちっちゃくて柔らかくて産まれてきてくれて
直ぐの私達の可愛い子供。
たっくさんの案が出て、悩んで悩んでやっと決めた、
この名前。
これからも大切にして欲しいなぁ。
こんなに小さくていいのか心配になるけど
これからどんどん大きくなっていくらしい。
男の子だから私の背なんてすぐに抜かすかな。
いつか大切な人ができて挨拶に行くのかな。
私達が死んだとき一番に悲しんでくれるかな。
何よりも大切にして欲しいのは貴方の命。
ずっとずーっと生き抜いて、悩んで泣いても立ち上がって前を向いて歩いていって欲しい。
...まぁその前に私達がこの子を立派に育てないと。
パパとママがお手本になれるように立派な背中を見せていかないと。
保育園に行ったら絵を描いてくれるかな。
絵がへたくそでもいいから描いて欲しい。
晴仁にどんな困難があっても包み込んであげないと。
とにかく生きていってね。
晴仁って名前にはどんなに世界が暗くなっても冷たくてもいつか必ず春が来て明るい世界になる。
そんな意味が込められているからね。
見守っているよ。
私達の可愛い晴仁。
「優しい雨音」
消えちゃうぐらい小さな声で。
忘れてしまいそうな細い声で。
...別れをこの世から消えてしまった事実を告げる
辛くて痛々しくて聴いていられないくらい苦しそうな
君の両親を俺はどうするのが正解だった?
暖かく声をかければいいのか。
俺を自分達の娘を最後まで守り抜けなかったと、恨んでもいいような人達に。
残念でしたね。って
声をかければいいのか。
それは、失礼なんじゃないのか。
自分も悲しんでいると、告げればよかったのか。
それは、自分勝手じゃないのか。
なんにも分からなくて、なにも言うことが出来なかった。
いつものように家でダラダラしていたら、電話がかかってきた。
彼女の両親だって言う。
沈黙が続いて、しばらくたってようやく聴こえてきたのは鼻水をすすって居る声で、異変にはすぐに気がついた。
途切れながら、一言ずつゆっくりと。
君がこの世から消えた事を告げる言葉は
重くて、でも電話で告げるには重すぎて。
家の外から聴こえる冷たくて暗く、強い雨音は
まるで自分が打たれていると思うほど大きく近く聞こえて俺の、俺達の心を凍らすには十分だった。
告げられてからしばらくして沈黙が再び訪れた。
電話の奥から聴こえる雨音が彼女が居ないことを肯定しているようで本当に彼女はもう居ないだ。って
自然な気持ちで想った。
なんだか急に心が落ち着いた。
本当に辛いときこそ冷静になるということは本当だったらしい。
そんな沈黙の中でも彼女の両親のすすり声は聴こえてきて。
俺はなにも言えなかった。
そうですか。もなんだか違うし。
残念でしたね。もなんだか違う。
迷って迷ってもなにも浮かばなかった。
というか考えられなかった。
君と居るうちに俺の考え方も感じ方も変わった。
別にだからじゃないけど中々俺にはなにも分からなかった。
それからしばらくたって彼女が交通事故で亡くなったことも。
運転手が飲酒運転をしていたことも分かった。
受け入れられるようになった。
彼女の事を想って夜に一人で泣くことも少なくなった。だからといって彼女のことを忘れたわけじゃない
覚えているからこそ、泣いていてはいけないと思ったんだ。忘れないように色褪せないように大切に大切に
心のなかに閉まって置かないと、と思ったんだ。
雨ってものは冷たくて暗いものだ。
でも雨は人を救うことも、涙を隠すことも出来る。
それに雨は暖かく優しいものもある。
そんな雨に打たれるのは心地いい。
俺の俺達の心を溶かすにはぴったりだと思うだろ?
雨は人を救える。涙をあの世から隠すことだって
出来るだろう。
「優しい雨音」
「歌」
消えないで欲しい。
泣かないで欲しい。
無理に、笑わないで欲しい。
自分の事を犠牲にしないで欲しい。
全部が悪いわけじゃない。
泣いたっていい。
逃げてもいい。
好きなだけ笑っていていい。
自分なんて駄目だって泣く夜があってもいい。
その度にもう一度立ち直れるなら。
涙を拭えるなら。
自分が好きだって言えるなら。
助けてって言えるなら。
生きたいって歌えるなら。
辛いことがあった?
悔しいことがあった?
苦しいことがあった?
じゃあ楽しかったことは?
嬉しくてたまらなかったことは?
短い1日を、前を向いて歩く事はできた?
出来なくてもいいよ。
一日中下を向いて止まって休んでいてもいいよ。
今までの人生は辛いことばっかりだった?
小さい頃に行った虫取は?
友達と遊んだ公園は?
別れを悲しんだ卒業式は?
新しい友達との出会いは?
大好きな友達との再開は?
始めて携帯をもらった時は?
気になる人が出来た時は?
小さな悲しみが大きな思い出に勝って、
記憶を消してしまうほど今までの人生は楽しくなかった?
昔に戻りたいって思ったことはなかった?
泣いたっていいんだよ。
泣いて鼻水すすってぐちゃぐちゃな顔になっても、
綺麗事だけを言うような人間になっても。
涙が出ているうちはまだ大丈夫。
勝手に溢れてくるうちは大丈夫。
自分で拭ってまだ戦えるから。
いつかは、いつかは涙が止まるから。
前が見えなくなってもまだ歩けるから。
道ってものは嫌でもずっと続いていくから。
泣けなくなったらもう駄目?
駄目じゃないよ。
誰かの涙を拭ってあげて。
背中をさすってあげて。
涙の暖かさが、背中の暖かさがが自分の心を溶かして
くれるから。
だから忘れちゃ駄目だよ。
泣いたって前を向いて歩けるし。
泣けなくたって隣には誰かいる。
優しさってものは誰に対したって帰って来てくれるから。
嫌でも帰って来るから。
歩けなくてもいいよ。
休んでたっていいよ。
生きたいって想えるなら。
助けてって歌えるなら。
命の叫びを歌えるなら。
いつだって下を向いてもいいじゃないか。
綺麗事だけでもいいじゃないか。
人を救えるなら。自分を救えるなら。
何だっていいじゃないか。
また笑えるなら。
いくらだって隣を歩いてあげる。
そんな人が絶体にいるから。いつか必ず出来るから。
命を歌って。
「歌」
「そっと包み込んで」
可愛くない私。
面白くない私。
愛する事をしたことがない私。
愛されたことがない私。
笑顔が不自然な私。
すぐに弱音を吐く私。
すぐに泣く私。
自分の気持ちに素直にれない私。
大切に出来ない私。
友達の居ない私。
料理も家事も何もうまく出来ない私。
「愛してる」なんて恥ずかしくて言えない私。
愛してるって言われたって信じられない私。
一人の夜に慣れてしまった私。
一人になりたい私。
貴方が誰かといることを許せない私。
本を読むのが好きな私。
部屋の外が怖くて外に出られない私。
ゲームが好きな私。
恋愛漫画が好きで現実が嫌いな私。
消えてしまいたいと願う私。
本当の私になれない私。
偽ることが何よりも楽な私。
大好きな貴方。
格好いい貴方。
優しい貴方。
愛することが得意な貴方。
愛され続けてきた貴方。
笑顔が素敵な貴方。
弱音を吐かず努力する貴方。
笑って踏ん張る貴方。
自分の気持ちを伝えられる貴方。
大切にできる貴方。
いつも友達に囲まれている貴方。
料理も掃除も上手な貴方。
「愛してる」って心から伝えてくれる貴方。
私がもし愛してるって言ったらとても喜ぶ貴方。
一人が嫌いな貴方。
一人の夜が何よりも嫌いな貴方。
私を信じてくれる貴方。
遊ぶ事が好きな貴方。
外が好きな貴方。
漫画よりも私と居る方が好きな貴方。
消えないで欲しいと言う貴方。
偽らず笑ってくれる貴方。
ありのままの私が好きだと言ってくれた貴方。
貴方に愛してもらえなくてもいい。
愛して欲しいけど何よりも私の前から消えないで
欲しいと願ってる。
私が嫌いになってもいい。
だから一度だけ私の事をそっと抱き締めて欲しい。
駄目な事ばっかの私だけどそっと包み込んで欲しい。
お願いだからあの世に行っても笑い会える関係で
いて欲しい。
貴方を私に愛させて。
愛しの貴方。
どうか私の側に居て。
こんな私だけど。
どうか、どうか抱き締めて。
いつまでも私を抱き締めていて。