城乃山 茸士

Open App
3/20/2023, 2:20:15 PM

ああ、これは夢なんだ。
そう気づいてしまったら急にいろいろなことがどうでも良くなった。悩んだことも、頑張ったことも、苦しんだことも。起きてしまえば何のことはない、いやな夢だった、というありきたりな言葉と共に処理されてしまうのだろう。この男に苦しめられてきたことも、今私が抱いている感情も。

ならば、夢が醒める前にこれだけは済ませておかなければ。

私は手の中の包丁を、その存在を確かめるようにぎゅっと握り締めた。

3/19/2023, 2:18:09 PM

なにもかもを見下ろしている。視界のずっと下の方に行き交う車が見える。たくさんの窓も見える。もうすぐ。もうすぐ自由になれる。細い足場の上から、私は足を一歩踏み出す。


胸が高鳴る。